トランプのツイッターで急浮上 米大統領選「悪夢のシナリオ」
選挙人制度の混乱
一部の専門家は、訴訟よりもっと懸念されるのは大統領選挙人制度に関する混乱が生じることだとみている。
米大統領は、形式的には国民の直接投票ではなく、憲法で定められた選挙人団によって選ばれる。ほとんどの州では、勝利した大統領候補がその州の選挙人全てを獲得する。選挙人の数は州の「人口」に基づいて割り当てられる。今年の場合は、12月14日に各州知事が選挙人の投票結果を認定し、連邦議会に提出してその後、認証を得ることになっている。
ただアムハースト大学のローレンス・ダグラス教授(法学)は今回、ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアという3つの激戦州で与野党の得票数が伯仲し、双方が勝利を宣言するシナリオを描く。
これらの州は知事が民主党、議会は共和党が握っており、知事がバイデン氏当選を認定しても、州議会がそれと別に、独自にトランプ氏勝利を認定することが想定されるという。
最高裁は最近、当該州で勝利した候補ではない別の人物に投票する「不誠実な選挙人」を州は罰することができるとの判断を示したが、十数州はそもそも、そうした選挙人に対するルールがまったくない。
また連邦法は最高裁ではなく連邦議会が、選挙人団を巡る紛糾を解決する責任を負うと定めている。しかしダグラス氏によると、この法律はあいまいで、「ねじれ」状態にある連邦議会では合意形成は簡単ではない。
同氏は「合衆国憲法の法体系が何らかの選挙危機に対処できるように設計されているかと問われれば、答えはノーになる」と話した。
強制退陣
たとえバイデン氏が勝利宣言しても、トランプ氏が敗北を認めようとしなければ、民主的な政治体制に深い傷がずっと残ることが最も気掛かりだとの声も聞かれる。
平和的な政権の交代は、米民主主義の代表的な特徴の1つに挙げられる。ダグラス氏は、ブッシュ氏とゴア氏の争いに終止符を打ったのは最高裁の判決ではなく、ゴア氏が敗北を受け入れたことだったと強調する。
バイデン氏は、トランプ氏が選挙で敗れても大統領の座に居座るようなら、退陣を「エスコート」するために軍が必要になるかのしれない、とまで示唆している。
トランプ氏の言動によって、彼の支持者が選挙は不正に操作されたとの確信を強め、ただでさえ人種差別抗議デモで不穏になっている米国社会をさらに混乱させる恐れもある。
ロヨラメリーマウント大学のジャスティン・レビット教授(憲法学)は、今回のトランプ氏のつぶやきについて、またしても、選挙を行う前からその手続きの正統性を否定しようとしていると指摘し、「深刻な不安定要素になっている」と嘆く。
ミシガン州で民主党のリーガルボランティアの研修を担当している弁護士のマーク・ブリュワー氏は、大統領選で延々と法的な争いが続くのを避ける最善の方法は、バイデン氏が大差で勝利することに尽きると述べた上で、「民主党は接戦にならないよう万全を期すべきだ」と訴えた。
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