トランプ最強の指南役、義理の息子クシュナーの頭の中
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外交問題から選挙運動まで多様な問題に大きな影響力を持つクシュナー TOM BRENNERーREUTERS
<縁故採用と批判を浴び続けた娘婿で大統領上級顧問のクシュナーが語る、コロナ対策と中東和平、大統領選の舞台裏>
遅からず(早ければ約半年で)ドナルド・トランプの大統領時代には歴史の審判が下る――のだが、その一節にはきっと、こう記されるだろう。この大統領に最も大きな影響力を持ち得たのは義理の息子、ジャレッド・クシュナーだったと。
トランプの娘イバンカの夫で、現在39歳のクシュナーは事実上の首席補佐官であり、大統領を支える面々の起用にも解任にも影響力を行使している。外交政策の要としてNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉などに関与し、新型コロナウイルス対策には主要メンバーとして参加。懸案の警察改革の推進役ともなり、再選を目指すトランプ陣営の知恵袋としても、今や欠かせない存在だ。
ファーストレディーは別として、大統領の親族でこれほどの影響力を持ち得た人物といえば、まず思い浮かぶのは故ジョン・F・ケネディ大統領の下で司法長官を務めた弟のロバート・F・ケネディだ。
あの兄弟にも、常にクールな兄と情熱的な弟という違いはあった。しかしトランプと娘婿クシュナーの違いはあまりに大きい。傲慢無礼なトランプに対し、クシュナーは冷静沈着。ちゃんと勉強しているし、いざとなれば野党・民主党にも協力を求める。批判を浴びても、いらついた様子は見せないし、裏で自分を哀れんだりもしない。
不動産会社は経営していたが、政治の素人だったのは事実。ワシントン・ポスト紙で誰かがクシュナーに好意的評価を下したときは、「あいつにも妻にもホワイトハウスで国家機密を扱う資格はない」と怒りの投稿を寄せた読者もいた。事実関係としてはそのとおりで、彼が縁故採用なのも間違いない。
しかし「大統領上級顧問」のクシュナーは、そんな批判を気にも留めない。本誌の取材にはこう答えている。「私は何でも屋だ。どんな問題でも大統領に一定の見解を示せるし、なんらかの診断と処方を与えられる」
どんな問題であれ、クシュナーはまず専門家の意見を聞き、過去の政策や対策を検討し、そして今までとは違う何かをやろうとする。「過去の失敗をなぞるのは無意味だ」と彼は言う。だから既存のものをぶち壊す。このへんはトランプと似ている。
本稿の執筆に当たり、筆者はクシュナーに2度、直接取材した(新型コロナウイルスのせいで電話経由だが、たっぷり話せた)。周辺の関係者数十人にも取材した。結果、「何でも屋」クシュナーは有能な人物であることが分かった。トランプに対して絶対的に忠実であることも。
以下、クシュナーが取り組んできた主要な政策に即して検証してみる。