最新記事

東南アジア

インドネシア治安当局、NZ人殺害のパプア武装組織の拠点を急襲 約300人で激しい戦闘、パプア人司令官を銃殺

2020年8月19日(水)20時23分
大塚智彦(PanAsiaNews)

TPNPB襲撃作戦に参加した兵士たち jawapostv official / YouTube

<世界有数の鉱山で起きた武装組織による襲撃事件。当局は組織をパプア独立運動とは関連付けないというがその訳は──>

インドネシアの東端に位置するパプア州の州警察本部長が8月17日、州都ジャヤプラで記者会見して、今年3月に同州で発生したニュージーランド人殺害事件を実行した組織の拠点を治安部隊が攻撃。同組織の地域司令官を殺害したことを明らかにした。

パプア州警察のパウルス・ワタルパウ本部長は記者会見で16日に同州南部ミミカ県にある武装組織「西パプア民族解放軍(TPNPB)」の拠点に対する作戦を実施したという。

作戦には警察官196人、陸軍兵士92人が重武装で参加し、拠点を攻撃して激しい銃撃戦となったという。

この作戦で武装組織のパプア人1人が死亡し、3人が負傷したものの3人とも付近のジャングルに逃げたため身柄の拘束には至らなかったという。

死亡したパプア人の身元について以前に逮捕したTPNPBのメンバーから提供された写真などから、同組織の地域司令官の一人で行方を探していたヘンキ・ワンマング(別名ヘンドリック)容疑者であることが確認されたと州警察は発表した。

3月の鉱山襲撃事件の実行組織

3月30日に同州ミミカ県にある米資本「フリーポート・マクマホン社」とインドネシアの鉱山開発会社「フリーポート社」が共同で開発している世界有数の金・銅鉱山「グラスベルグ鉱山」の事務所、従業員住宅地区が襲撃され、ニュージーランド人のグラエム・トーマス・ウォール氏(57)が殺害され、インドネシア人従業員2人が負傷する事件が起きた(関連記事:「武装組織襲撃で外国人含む3人死傷 独立運動で治安悪化が続くインドネシア・パプア」)。

TPNPBはこの襲撃事件直後に犯行声明を出しており、治安当局のその後の捜査などからTPNPB内にある複数の組織のうちヘンキ容疑者が率いるグループが関わっていたとの疑いを強め、同グループ司令官であるヘンキ容疑者とその仲間の捜索を続けていた。


【話題の記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

海外動向など「不確実性高い」、物価に上下のリスク=

ワールド

中国の秘密ネットワーク、解雇された米政府職員に採用

ビジネス

米、輸出制限リストに80団体追加 中国インスパー子

ワールド

トランプ氏、情報漏洩巡り安保チーム擁護 補佐官「私
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 8
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中