地球温暖化は+4.8℃の最悪シナリオへまっしぐら?
'If RCP8.5 Did Not Exist, We'd Have to Create It' For 2050 Climate Change
温室効果ガスの排出量はRCP8.5とほぼ一致 Ekaterina_Simonova-iStock
<科学界でも否定的な見方があるIPCCの「最悪の想定」が短期的には最も正確な予想だと米科学者らが主張>
米科学者らは8月3日、米国科学アカデミー紀要に新たな研究報告を発表。気候変動が地球にもたらすリスクについて、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が提示した「最悪のシナリオ」が、今後30年のリスクを最も正確に評価しているとの見解を示した。21世紀を通じて温室効果ガスの排出量が増え続けると想定するIPCCの「RCP8.5シナリオ」のことだ。
ウッズホール研究所(マサチューセッツ州)のクリストファー・シュワルム率いる研究チームが発表した報告は、温室効果ガスの排出量を(特に短期間にわたって)追跡する上で、「RCP8.5シナリオ」が重要な意味を持つ理由を説明している。
IPCCは、温室効果ガスの排出量とそれを削減するための対策について、複数のパターンに基づく気候変動の予測シナリオを提示。それが代表的濃度経路(RCP)と呼ばれるシナリオだ。このうち最も楽観的な「RCP1.9シナリオ」は、2100年までの地球の平均気温の上昇を、産業革命の前と比べて1.5℃未満に抑えることを目指す内容だった。RCP8.5シナリオは最悪のケースを想定した内容で、2100年までに地球の平均気温が2.6℃~4.8℃上昇すると見込んでいる。
否定するのは「偏った考え方」
研究チームはRCP8.5シナリオについて、最近では否定的な見方もあり、科学者の中にも「人騒がせ」で「人々を誤った方向に導く」シナリオだと指摘する声があると説明している。1月に科学誌ネイチャーに掲載された解説記事は、同シナリオについて「起こる可能性が低い最悪の想定」と捉えるべきだと主張した。ブレークスルー研究所(カリフォルニア州)の気候およびエネルギー問題担当ディレクターであるゼキ・ハウスファーザーは、当時BBCに対して、同シナリオが作成された2005年以降、状況は大きく変わっていると語っていた。「当時、現実になる可能性が10%に満たないとされた最悪の想定は、今ではきわめて可能性が低い想定だ」
だがシュワルムと同僚の科学者たちは、RCP8.5シナリオを否定することは「残念なだけでなく、偏った考え方だ」と主張する。報告書の中で彼らは、現在の二酸化炭素の累積排出量の実態とRCP8.5シナリオの誤差は1%未満だと指摘。また2050年までに気候変動によってもたらされるリスクを評価する上でも、実態やこれまでに表明されている政策と「最も合致した」正確なシナリオがRCP8.5だと説明した。
<参考記事>地球温暖化:死守すべきは「1.5℃」 国連機関がより厳しい基準を提言
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