インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然
関係者23人に事情聴取、警察犬も投入し捜査
これまでに犯行現場に警察犬を投入して被害者、加害者の手掛かりを追うとともに13日までにヨディ氏の家族や7年間交際して結婚を考えていたという恋人、メトロTVの同僚、友人など23人から事情を聞いたとしている。
ジャカルタ警察報道官は11日、事情聴取などの結果に関して「現時点ではまだ話せることはない。犯行の動機もまだ不明確である」としている。
物盗りでないとすると犯行動機が怨恨によるものなのか、偶発的ないさかいやケンカも可能性としては考えられるが現時点では断定に至っていないものとみられている。
警察によるとヨディ氏は刺される前に殴られるなどの暴行を受けていた可能性があるとしており、さらに同氏が着ていたジャケットのポケットから刃物が発見されたことも明らかにしている。このヨディ氏が所持していた刃物がなんらかの事情で自己防衛のために所持していたものなのかどうかも含めて警察は周辺の関係者から事情を聞いているようだ。
ヨディ氏の職場であるメトロTVのニュース部門のディレクター、アリフ・スディトモ氏は地元メディアの取材に対して、ヨディ氏は2015年12月にメトロTVに就職し、主に映像編集の仕事に携わり、7月7日は午後3時から午後10時半までの勤務シフトだったと語った。
事件の動機、犯人は謎のまま
ニュース番組の映像編集というヨディ氏の仕事の性格から、取材対象者などからの恨みや怒りを買う可能性は低いとみられ、テレビマンとしての取材や業務に関係する殺人ではなく、個人的な事情が背景にあるとの見方もでている。
ただし、これまでのところ犯行に関する目撃者が全くいないこと、さらに刃物で首や胸を刺すという凶行から「殺害を目的としている」とみられ犯人には明らかな殺意があった可能性があり、強い怨恨が動機の犯行との見方が有力視されているという。
警察の検視結果によると犯行は遺体の状況から発見された10日の2、3日前としていることから、ヨディ氏は7日の午後10時半ごろにメトロTVを退社。帰宅途中にガソリンスタンでバイクを停車した後に事件に巻き込まれ、深夜に殺害された可能性が高くなっている。
これまでの警察の事情聴取では7年間交際していた恋人がおり、女性問題があったとの情報はなく、また職場関係者や交友関係者からも特に複雑な人間関係や恨みをかうような情報もなく、個人的な人間関係のもつれによる犯行との見方も現状では難しいという。
いずれにしろ若いテレビ局の編集スタッフという報道関係者が殺害されて遺棄遺体が発見されるという殺人事件に、メトロTVを含めた民放各局、タブロイド紙を含めた主要メディアは「ヨディ氏殺害の謎」として事件発生直後から葬儀の様子、家族のインタビューまでを大きく報じている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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