「感染症で死ぬ前に餓死する」対中貿易が途絶えた北朝鮮で悪化する人道危機
Virus Border Closure Pains North Korea
中朝国境に架かる中朝友誼橋(左)と朝鮮戦争中に破壊された鴨緑江断橋 CHINA PHOTOS/GETTY IMAGES
<金正恩はコロナ対策強化を指示したが食料と医薬品の不足が国民を直撃>
中国湖北省武漢での新型コロナウイルス発生を受け、北朝鮮が中国との国境を封鎖したのは今年1月末。対中貿易の激減で北朝鮮の経済は壊滅寸前に追い込まれている。
中朝貿易は6月にも再開すると見込まれていたが、国境封鎖は今も続き、北朝鮮は深刻な物資不足に陥っている。
北朝鮮国内からの情報によれば、封鎖解除の延期を決めたのは北朝鮮側とみられる。中国では最近、遼寧省など東北部で新たな感染者が報告されている。北朝鮮は国境地帯での感染再燃が国内に飛び火するのを警戒したのだろう。
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の最近の動きもそうした見方を裏付ける。金委員長が議長を務めた7月2日の政治局拡大会議では、主に新型コロナウイルス対策が話し合われた。金は周辺国で再び感染者が増えている状況から警戒を緩めてはならないと強調、ウイルスの流入を防ぐため今後も半年間は強固な厳戒態勢を維持するよう指示した。北朝鮮当局はコロナ対策を最重要とは言わないまでも、重要な政策課題に据えたとみていい。
だが厳重な防疫措置は、北朝鮮の人々を新型コロナウイルスから守る以上に物資不足で締め上げる結果を招いた。中朝貿易は今年3、4月に前年同期比で9割も減少。北朝鮮経済は目下、史上最悪レベルの苦境に陥っている。
北朝鮮に対する国連の制裁が大幅に拡大された2016年以降、中朝貿易は増加し続け、中国は北朝鮮の対外貿易の95%を占めるまでになった。そのため制裁違反の密輸品は別として、北朝鮮の人々の生活は中国から流入する物品に大きく依存してきた。
しかも、ここ数年で中国は北朝鮮の最大の輸出先にもなった。国連の制裁で北朝鮮が輸出できる品目は大幅に制限されているが、中朝の当局者は制裁回避に知恵を絞り、密接な貿易関係を維持してきた。例えば北朝鮮は制裁対象に含まれない腕時計、かつら、付けまつ毛などを大量に中国に輸出。こうした品目では貿易額はたかが知れているが、それでも北朝鮮は対中輸出で貴重な外貨を確保してきた。
病院に薬の製造を命令
それ以上に重要なのは食料の安定的な確保だ。中国の貿易統計によれば、北朝鮮向けの食料輸出は昨年史上最高を記録した。昨年初め北朝鮮の農業生産が大幅に低下したと伝えられたが、食料品の価格が比較的安定していたのは中国の大量輸出のおかげだろう。
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