トランプ姪の暴露本は予想外の面白さ──裸の王様を担ぎ上げ、甘い汁を吸う人たちの罪
How He Gets Away With It
しかし最も興味深いのは、この「施設」でドナルドの世話をしている面々の描写だ。妻メラニアや子供、弁護士や銀行家、ウィリアム・バー司法長官やマイク・ポンペオ国務長官、そして娘婿のジャレッド・クシュナー。本来なら私たちをドナルドから守れたはずなのに、そうしないでいる人たちへの痛烈な評価だ。
王様は裸だと知りつつ、彼らは恥も外聞もなくドナルドをおだて、祭り上げてきた。なぜなのか。
答えは本書の後半に用意されている。彼女は書く。祖父フレッドは息子ドナルドがペテン師であることに気付いていたし、そもそもフレッド自身が公金を食い物にして懐を肥やし、脱税で子供たちを太らせる詐欺師だったと。
だからこそ祖父フレッドは、息子がカジノ経営で大失敗したときも裏で助けてやった。「フレッドはドナルドの成功という幻想にあまりに多くを注ぎ込んだので、ドナルドから離れられなかった」。メアリーはそう書いている。
この評価は、2016年大統領選挙でトランプ陣営の選対本部長だったケリーアン・コンウェイや元大統領補佐官のジョン・ボルトン、メラニアといった面々にも当てはまりそうだ。
こういう面々にいつも守られているから、ドナルド・トランプは決して学ぶことがない。甘やかされ、嘘を聞かされ、称賛されるばかりだから、自分は何をしてもいいと思い込んでいる。
そんなドナルドが、いくら負けても勝ち残れるのは、彼の妄想を大事に育ててきた人たちが彼を守るためなら何でもするからだ。彼自身は空っぽだ。だから操るのは簡単だが、途中で放り出すわけにはいかない。そんなことをすれば全ての虚構が明るみに出て、自分たちの道徳的・戦略的な誤りを認めざるを得なくなる。だが、誰だって今さら誤りを認めたくはない。
家族の生き証人として
ドナルドは単なる鏡だ。この男が空っぽなのは、彼を育て、支えてきた人たちが空っぽだから。鏡に映る裸の王様は実のところ自分たちだと、気付かされるのは耐え難い。だから、もう落ちるところまで落ちるしかないと思ってしまう。
最悪だ。メアリーが結論的に書いているように、ここまでくると「真に問題なのはドナルド本人ではない」。本当に問題なのは彼の魂を「暗闇に捨て置く」面々であり、その責任こそ問われるべきだと著者は言う。
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