大切な人との「別れ」に苦しむ人へ──カリスマゲイ精神科医が授ける自分を取り戻す処方箋
永遠に続くと思えるような苦しみにも終わりがある Tharakorn/iStock.
<人生をともにしたパートナーを死別で失った精神科医が、自身の経験をもとに心の癒し方をアドバイスする>
新型コロナウイルスがもたらした悲劇のひとつは、患者が亡くなる最期の時さえ身近な人とともに過ごすことができないことだと言われる。また、自然災害など予期せぬ事態で、突然、大切な人を失ってしまうこともある。
大切なあの人に、もう二度と会うことができない──「大切な人との別れ」は人生の中で誰にでも起こり得る。しかしながら、「その時」に備えられている人は多くない。もしも「その時」が来たら、自分の心身にはどんなことが起こるのか。そして、自分はどう対処すればいいのか。
つらい別れを経験した精神科医からの助言
死別だけでなく、失恋や離婚といった様々な別れを経験した人に向けて、苦しみやつらい気持ちをどう受け入れるか、そしてどのように自分を取り戻していくかを優しく説いた『失恋、離婚、死別の処方箋 別れに苦しむ、あなたへ。』(精神科医Tomy著、CCCメディアハウス)が今月発刊された。
著者は精神科医のTomy氏。自らを「アテクシ」と呼ぶ独特の語り口が人気で、ツイッターには17万を超えるフォロワーを持つ。雑誌やテレビ、ラジオにも覆面出演しているほか、著書も多い。疲れた心や弱った心に染み入るツイッターの優しいメッセージは、現役精神科医としての経験や自身が生きていくうえでの気づきから生まれている。
そんな、いま注目のTomy氏だが、かつて、人生をともにしたパートナーを死別で失った経験を持つ。曰く、彼と出会うために自分はゲイとして生まれてきたのだ、と思えるほどの相手だった。突然の他界に、当然Tomy氏は激しく苦しんだ。
いまは穏やかな日常を取り戻しているTomy氏だが、死別からいまにいたるまでには、精神的な紆余曲折があったという。死別直後の混乱、そしてあえて仕事にまい進する時期を経て、いったんは仕事もプライベートも落ち着きを取り戻したかのように思えた。しかし、その頃から心身を異変が襲うようになる。
例えば、ちょっとした時間にぼうっとすることが増え、一瞬、記憶が飛ぶようなことが起きた。なぜか眠れない状態が続き、趣味の筋トレでもダンベルを持ち上げられなくなった。仕事に際しても、診察中に患者に掛ける言葉が出てこないといった支障が表れた。
精神科医でありながら、自身が軽いうつのような状態に陥ったのである。その後は、仕事量を調整したり、休日に何もせずゆっくり過ごしたりすることで、少しずつ改善していった。突然ひどくなる日も調子が良い日もあったが、なんとか切り抜けていった。
苦しみの渦中で、Tomy氏は自らが生きていくために思いついた言葉をメモとして残していた。そうすることで、少しでも楽になる方法を模索した。また、精神科医として、自分と同じ経験をする人たちに、いつかそのメモが役立つのではないかとも考えた。そんな体験から生まれたのが本書『別れに苦しむ、あなたへ。』だ。