最新記事

メンタルヘルス

大切な人との「別れ」に苦しむ人へ──カリスマゲイ精神科医が授ける自分を取り戻す処方箋

2020年7月21日(火)14時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

永遠に続くと思えるような苦しみにも終わりがある Tharakorn/iStock.

<人生をともにしたパートナーを死別で失った精神科医が、自身の経験をもとに心の癒し方をアドバイスする>

新型コロナウイルスがもたらした悲劇のひとつは、患者が亡くなる最期の時さえ身近な人とともに過ごすことができないことだと言われる。また、自然災害など予期せぬ事態で、突然、大切な人を失ってしまうこともある。

大切なあの人に、もう二度と会うことができない──「大切な人との別れ」は人生の中で誰にでも起こり得る。しかしながら、「その時」に備えられている人は多くない。もしも「その時」が来たら、自分の心身にはどんなことが起こるのか。そして、自分はどう対処すればいいのか。

つらい別れを経験した精神科医からの助言

死別だけでなく、失恋や離婚といった様々な別れを経験した人に向けて、苦しみやつらい気持ちをどう受け入れるか、そしてどのように自分を取り戻していくかを優しく説いた『失恋、離婚、死別の処方箋 別れに苦しむ、あなたへ。』(精神科医Tomy著、CCCメディアハウス)が今月発刊された。

著者は精神科医のTomy氏。自らを「アテクシ」と呼ぶ独特の語り口が人気で、ツイッターには17万を超えるフォロワーを持つ。雑誌やテレビ、ラジオにも覆面出演しているほか、著書も多い。疲れた心や弱った心に染み入るツイッターの優しいメッセージは、現役精神科医としての経験や自身が生きていくうえでの気づきから生まれている。

そんな、いま注目のTomy氏だが、かつて、人生をともにしたパートナーを死別で失った経験を持つ。曰く、彼と出会うために自分はゲイとして生まれてきたのだ、と思えるほどの相手だった。突然の他界に、当然Tomy氏は激しく苦しんだ。

いまは穏やかな日常を取り戻しているTomy氏だが、死別からいまにいたるまでには、精神的な紆余曲折があったという。死別直後の混乱、そしてあえて仕事にまい進する時期を経て、いったんは仕事もプライベートも落ち着きを取り戻したかのように思えた。しかし、その頃から心身を異変が襲うようになる。

例えば、ちょっとした時間にぼうっとすることが増え、一瞬、記憶が飛ぶようなことが起きた。なぜか眠れない状態が続き、趣味の筋トレでもダンベルを持ち上げられなくなった。仕事に際しても、診察中に患者に掛ける言葉が出てこないといった支障が表れた。

精神科医でありながら、自身が軽いうつのような状態に陥ったのである。その後は、仕事量を調整したり、休日に何もせずゆっくり過ごしたりすることで、少しずつ改善していった。突然ひどくなる日も調子が良い日もあったが、なんとか切り抜けていった。

苦しみの渦中で、Tomy氏は自らが生きていくために思いついた言葉をメモとして残していた。そうすることで、少しでも楽になる方法を模索した。また、精神科医として、自分と同じ経験をする人たちに、いつかそのメモが役立つのではないかとも考えた。そんな体験から生まれたのが本書『別れに苦しむ、あなたへ。』だ。

<参考記事:笑顔の裏で心はグレー、「ほほ笑み鬱」はほかの鬱病より危ない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独クリスマス市襲撃の容疑者、殺人などの罪で勾留命令

ビジネス

日本生命、営業職員の賃金6%上げ 3年連続100億

ビジネス

午前の日経平均は反発、米株高が支援 一時400円高

ワールド

伊、オープンAIに罰金 チャットGPTがデータ保護
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中