コロナ禍の韓国で勢いづくベーシック・インカム導入議論
South Korea Mulls Basic Income Post-COVID
最大野党の未来統合党の中にも、UBIが国民の支持を集めているという認識が広がっている。ある有力な保守系政策専門家は同党に「UBIは次期大統領選で最重要の争点になる」と進言した。
いま未来統合党を率いる金鍾仁(キム・ジョンイン)も、UBIを支持すると表明。党内では、次期国会でUBIを最重要の論点にすることが議論されているという。さらに興味深い動きがある。新党「ベーシック・インカム党」から龍慧仁(ヨン・ヘイン、30)が国会議員に当選したのだ。
同党の設立は2019年。韓国初の「単一争点政党」だ。選挙公約は全国民に毎月60万ウォン(約5万4000円)を支給すること。支持者の大半は、20~30代の失業者や不完全就業者だ(さらに党員の85%が40歳以下)。
ベーシック・インカム党の国会での影響力は限られていても、議席を獲得したのは国民、特に若者の支持があったからだ。龍は6月初め、UBI政策について意見を交わすため、主要政党の合同会議を呼び掛けた。
巨額の財源をどうする
UBIの実施には、地方の経験を参考にするのが重要だろう。韓国で最も人口の多い京畿道は左派系の李在明(イ・ジェミョン)知事の下、実施に向けて着々と前進している。2017年に京畿道城南市の市長に就任して以来、李は革新的な政策で全国の注目を集めた。その1つが「若者向けUBI」だった。
これは、24歳の市民全員に市内だけで通用する商品券を支給するというもの。この政策が成功したのを受けて、李は知事になった京畿道でも2019年に同様の施策を導入した。コロナ禍が起きてから、李の政策は全国で称賛を浴び、彼は次期大統領選の有力候補とみられている。
いま京畿道は若い世代だけでなく、全住民を対象にしたUBIプログラムの導入を目指している。5月15日には「共に民主党」の議員がUBI導入に関する条例の草案を提出し、実現に向けてさらに前進した。
もっとも、UBIを国レベルで実施しようとすれば、間違いなく長期にわたるプロジェクトになる。韓国の現在の動きは大いに期待が持てるが、高いハードルが待ち受けていることも確かだ。
まず、財源の問題だ。ベーシック・インカム党の公約どおり毎月60万ウォンを全国民に配るのなら、年間約370兆ウォン(約33兆3000億円)がかかる。膨大な額である。コロナ後に予想される経済状況を考えれば、なおさら大変だ。
UBIを全国で実施するために必要なのは、持続する財源を見つけること、そして社会保障制度の改革だ(この点については右派と左派で意見が対立しそうだ)。UBIに法的根拠を与えるため、憲法改正も必要かもしれない。