最新記事

台湾の力量

孤軍奮闘する台湾を今こそ支援せよ

WE MUST BACK TAIWAN

2020年7月14日(火)11時15分
トム・コットン(米共和党上院議員)

ANG90246/ISTOCK

<中国の圧力により、コロナ対策で有益な教訓を持つ台湾がWHOに参加できずにいる事実は、世界に損失をもたらした。アメリカは台湾の国際社会への参加を後押しし、軍事や通商関係も一層強化すべきだ。本誌「台湾の力量」特集より>

WHO(世界保健機関)とテドロス・アダノム事務局長は、新型コロナウイルス危機が始まって以来、このウイルスに関する中国政府のプロパガンダを受け入れ、拡散させてきた。そして、5月にテレビ会議形式で開催されたWHO総会でも、ある贈り物を中国共産党政権に送った。この総会に台湾がオブザーバーとして出席することを認めなかったのである。中国は長年の間、台湾が国際機関に加わったり、外国政府と国交を樹立したりすることに激しく反発し続けてきた。

20200721issue_cover200.jpgWHOには台湾のオブザーバー参加を認める権限がないと、WHO側は主張している。しかし、テドロスの前任の事務局長は、台湾の総会への出席を許可していた。要するに、テドロスは中国政府の怒りを買いたくなかったのだろう。

テドロスの臆病な態度は、世界に損失をもたらした。台湾は新型コロナウイルスへの対応に成功し、ほかの国々にとって有益な教訓をいくつも持っているからだ。

台湾当局は早くも昨年12月31日の時点で、中国・武漢からの直行便でやって来る乗客を対象に機内検疫を開始した。この段階では、中国政府はほぼ何の対策も講じていなかった。ヒトからヒトには感染しないと、まだ主張していたのだ。

中国で感染拡大に歯止めが利かなくなるのを尻目に、徹底した国境管理、テクノロジーを駆使した感染者追跡、積極的な検査を行った台湾は、平穏を維持できた。人口2300万の台湾で、症例数はわずか451人。死亡者数は7人にとどまっている。しかも、発表しているデータの信頼性も中国よりはるかに高い。

中国の圧力を跳ね返すとき

台湾は、アメリカを含む友好国への支援にも力を入れてきた。現在生産しているサージカルマスクは、1日当たり1700万枚を突破。中国と異なり、品質の信頼性も高い。4月には、アメリカに200万枚ものマスクを寄贈した。

それでも、WHOの官僚たちは台湾を正当に評価しないだろう。そこで、台湾の貢献が正しく評価され、台湾の人々の民主主義への思いが尊重されるようにするために、アメリカが積極的に行動する必要がある。

米政府は、国連などの国際機関への台湾の有意義な参加を後押しし続けるべきだ。国務省は、米政府関係者と台湾側の交流に制約を課しているルールの多くを廃止する必要もある。そのようなルールは、犠牲をいとわずに対中関与路線を推進すべきだと考えた政治家と官僚たちによって設けられたものだ。しかし、そのような時代はもう終わった。

【関連記事】アメリカ、今年の環太平洋合同演習に中国ではなく台湾を招待か

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ大統領、強制送還移民受け入れの用意 トラン

ビジネス

Temuの中国PDD、第3四半期は売上高と利益が予

ビジネス

10月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+2.3%

ワールド

ノルウェーGDP、第3四半期は前期比+0.5% 予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中