最新記事

生物

ヘビのような両生類アシナシイモリの謎 口腔の毒腺が発見される

2020年7月8日(水)17時00分
松岡由希子

両生類「ミカンチビアシナシイモリ」の口腔に爬虫類と同様の毒腺があった Image credit: Carlos Jared.

<ヘビやミミズに似た無足の両生類アシナシイモリの一種のの口腔に爬虫類と同様の毒腺があった...>

マムシやコモドオオトカゲなど、爬虫類の一部には、口腔で毒液を分泌する器官があるが、長年、両生類にこのような器官はないと考えられてきた。しかしこのほど、両生類「アシナシイモリ(ハダカヘビ)」の一種である「ミカンチビアシナシイモリ」の口腔に爬虫類と同様の毒腺があることが明らかとなった。

アシナシイモリとは、熱帯アフリカや東南アジア、中南米などの熱帯地域に生息する、ヘビやミミズに似た無足の両生類である。米ユタ州立大学の生物学者エドムンド・ブロディ名誉教授、ブラジル・ブタンタン研究所のペドロ・ルイス・メーロ-フォンタナ研究員らの研究チームは、その一種であるミカンチビアシナシイモリの研究に取り組んできた。

ヘビよりも先に進化していた可能性がある

2018年2月に発表した研究論文では「ミカンチビアシナシイモリは、尾の真皮に毒腺を持つ一方、頭部には粘液腺が集中している」ことを明らかにした。ミカンチビアシナシイモリは、捕食者から逃れるため、速やかに地中に潜り込めるように頭部で粘液を分泌し、「最終兵器」として尾で毒を分泌できる機能を備えているのではないかと考えられている。

さらに研究チームは、これまでにミカンチビアシナシイモリの真皮で確認されている毒腺とは異なる組織に由来する口腔腺を発見した。2020年7月3日に学術雑誌「アイサイエンス」で掲載された研究論文の筆頭著者で、胚に関する分析を行ったメーロ-フォンタナ研究員によると、「真皮にある毒腺は表皮から形成されているが、これらの口腔腺は歯系組織から発生している。これは、爬虫類の毒腺でみられる発生学的起源と同じだ」という。無足のミカンチビアシナシイモリは口のみで捕食することから、ミミズやシロアリ、カエルなどの獲物を噛んだときに、口腔腺が作動するのではないかとみられている。

image_8603_2-Ringed-Caecilian.jpg

ミカンチビアシナシイモリの口腔腺からの分泌物の生化学的な組成についてはまだ解明されていない。ブロディ名誉教授は「分泌物が毒であることを証明できれば、ミカンチビアシナシイモリの口腔腺が、口腔の毒腺の初期の進化的設計を示すものになるかもしれない。口腔の毒腺は、爬虫類であるヘビよりも先に、両生類のアシナシイモリで進化していた可能性がある」と述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中