最新記事

感染症

ロックダウンで事故は減っても死亡率上昇 コロナ下の世界の交通事情

2020年7月7日(火)12時21分

この春、新型コロナウイルスのまん延に伴うロックダウン(都市封鎖)により、交通量が大幅に低下し、自動車事故の件数も減少した。写真は4月、交通量の減ったマンハッタン市中(2020年 ロイター/Mike Segar)

この春、新型コロナウイルスのまん延に伴うロックダウン(都市封鎖)により、交通量が大幅に低下し、自動車事故の件数も減少した。だがロイターが分析したところ、いくつかの都市では、車が少なくなった道路でドライバーたちが速度を上げるようになったため、死亡事故が起きる可能性はむしろ高くなっていることが分かった。

ニューヨーク市では4月、交通事故全体に占める死亡事故の比率が前年に比べ167%上昇。同じく、シカゴでは292%、ボストンでは65%の増加となった。欧州では、スペインのマドリッドで、死亡事故の比率が470%も上昇している。

交通量が激減しているのに道路の危険性が増している、という状況は米国全土に見られる。米国安全性評議会は運転距離1マイルあたりの死亡率について、今年4月は前年同月比で37%上昇したと述べた。

同評議会は5月、ロックダウンと交通渋滞の減少で「無謀運転が公然と解禁されたように見える」との声明を出した。

米オハイオ州における調査によれば、クリーブランド、シンシナティ、コロンバスでは、3月28日から4月19日にかけて平均速度の上昇はわずかだったものの、大幅な速度超過で運転していたケースは劇的に増えたという。

オハイオ州立大学の都市・地域分析センター所長、ハーベイ・ミラー教授(地理学)は、「速度超過はあまりにも酷い。本当にショックを受ける」と話す。「交通量の減ると走行速度が上昇するという事実は、交通量の多さがスピードを抑制する大きな要因になっているという証拠だと考えられる」

欧州交通安全協議会がまとめた報告によれば、ベルギーやデンマークなどでも同じように高速運転の増加が見られるという。

教訓は何か

もちろん多くの場所では、交通量が減少した結果として事故の死者数そのものは減っている。ニューヨーク市における4月の衝突事故件数は4103件で、前年同月の1万6808件より76%も減った。同じく、死亡事故は20件から13件に35%の減少。だが、衝突事故1000件あたりの死亡事故件数は、逆に1.2件から3.2件に増加している。

街路の安全性や自転車、徒歩、公共交通機関による移動を提唱するニューヨーク市の団体「トランスポーテーション・オルタナティブ」の広報担当者ジョー・カトルフォ氏は、「市街地の道路では、衝突といっても速度は低く、フェンダーが凹む程度の軽い事故で済む」と語る。「ドライバーが飛ばすようになれば、そうした事故も死亡につながる可能性が高くなる」

カトルフォ氏は、ロックダウン中に得られた教訓を活用して街路の設計を見直すべきだと語る。まるで幹線道路のように幅の広い街路は高速での運転を誘発する。また、自転車や徒歩で移動し、座り、ジョギングを楽しめるよう、自動車を締め出す街路を増やすべきである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、米株高を好感 上値は重い

ビジネス

英中銀総裁、財務相と1月に中国訪問=英メディア

ビジネス

欧米ステランティス、オハイオ州工場での1100人削

ワールド

アイスランドで史上最年少の女性首相就任、36歳 新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中