オーストラリア経済の長期繁栄に終止符 観光・教育・移民の構造転換が新型コロナで裏目に
世界金融危機にさえ耐え抜く底力を見せたオーストラリア経済も、新型コロナウイルスにはかなわなかった。過去最長を記録していた景気拡大局面は突然幕切れを迎えて深刻な景気後退(リセッション)に突入、今後回復までに相当長い道のりをたどりそうだ。写真は6月23日、シドニーで撮影(2020年 ロイター/Loren Elliott)
世界金融危機にさえ耐え抜く底力を見せたオーストラリア経済も、新型コロナウイルスにはかなわなかった。過去最長を記録していた景気拡大局面は突然幕切れを迎えて深刻な景気後退(リセッション)に突入、今後回復までに相当長い道のりをたどりそうだ。
新型コロナのパンデミック(大流行)への対処という意味では、同国は死者を100人強に抑え込んでいる点から大きな成功を収めていると言える。だが感染防止で海外との往来をストップしたため、成長をけん引してきた観光、教育、移民という「3本柱」が大打撃を被った。
オーストラリアが直近で経験したリセッションは1990年代初め。当時18歳だったフィオナ・グリンさんは、いったん音楽出版関係のアルバイトで生活をしのいだ後、正社員に転じてエンターテインメント業界で実りのある職歴を重ねることができた。
ところが今回はそうした幸運に恵まれていない。シドニーのANZスタジアムのマーケティングディレクターを4月に解雇された彼女は、借りていた家の契約を解除し、メルボルンの実家に戻らざるを得なくなったのだ。
パンデミックとともにオーストラリアが30年ぶりにリセッションに陥り、失業率が19年ぶりの高さとなる7.1%に跳ね上がったことで、生活手段を奪われたのはグリンさんをはじめ数十万人に達する。
オーストラリアは、世界的に見ればロックダウン(封鎖)をいち早く解除した国の1つに属する。解除時期も政府の想定より前倒しになった。それでも第1・四半期の成長率はマイナス0.3%に沈み、足元では新規感染者が再び増加して景気回復の前途を危うくしている。
雇用の面で特に女性が痛手を受けつつある。フルタイムの職探しをしている女性失業者はロックダウンが始まる前の2月が5.4%だったが、5月は8.3%に上昇。同じ期間の男性は4.8%から7%と上がり方が鈍い。
現在政府からの給付金を受け取っているグリンさんはロイターに「オーストラリアは幸運な国として知られているのに、今の私はとても幸運とは言えない。何か就職の機会がないか数人に打診しているけれど、まだなしのつぶてです」とうなだれた。