最新記事

アフリカ

ナイジェリアの分離独立「ビアフラ闘争」、内戦から半世紀を経ても未だ終わらず

Biafra’s Pain Is Still Fresh

2020年7月4日(土)14時00分
パトリック・エグウ

magw200704-nigeria03.jpg

昨年5月にはビアフラ独立を支持するデモが世界各地で行われた(写真はローマ) STEFANO MONTESIーCORBIS/GETTY IMAGES

1994年の内戦で約80万人が命を落としたルワンダでは政府が追悼の日を設けているが、ナイジェリアの現政権が50年前の内戦を公式に追悼する気配はない。ただしビアフラの「首都」だったエヌグにはイボ人の歴史を伝える「センター・フォー・メモリーズ」があり、住民レベルでは記憶を伝承しようとする地道な取り組みが続いている。

内戦終結から半世紀、今年1月にはイェミ・オシンバジョ副大統領が政府高官として初めて、国を挙げて歴史に向き合う必要性を訴えた。内戦ゆかりの品々を展示する国立戦争博物館を訪ね、「あの内戦は国の運命を変えた悲劇であり、癒やしと和解を促すためには全国的な対話が欠かせない」とツイートしたのだ。

「これまでの50年は私たちのものだったが、これからの50年は子供たちのものだ」と彼は続けた。「彼らを古い怨嗟(えんさ)の亡霊から解き放たねばならない。友情を育むことは可能だと、子供は身をもって示してくれる。私たちを超えていくチャンスを、彼らに与えようではないか」

国立戦争博物館は、醜い過去を乗り越えて癒やしと和解を実現するとの目標を掲げて1985年に設立された。だが、その目標は今も達成されていない。博物館はあっても議会や政府が動かないからだ。

いま再びビアフラ独立を叫んでいるのは若い世代だ。今の、そしてこれからのナイジェリアを支えていく世代だ。なのに今の政権は、過去半世紀の政権がそうだったように、彼らと真摯に向き合おうとも、話し合おうともしない。

若い世代が独立の夢を捨てることはない。それでも政府は、いざとなれば再び力に訴えるのだろうか。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2020年7月7日号掲載>

【話題の記事】
全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは
「アフリカ系アメリカ人」「黒人」、どちらが正しい呼び方?
ニューヨーク当局が新型コロナ時代のセックス指針を公開「最も安全な相手は自分自身」
米南部の感染爆発は変異株の仕業?

20200707issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナに無人機攻撃、1人死亡 エネ施設

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中