スウェーデンの悪夢はパンデミック以前から始まっていた
The Failure Started Before the Pandemic
高齢者ケアは介護放棄と監督不行き届きの構図と切り離せない。2017年の保健福祉庁のデータによれば、人手不足や訓練不足なども原因で、ケアを受けている高齢者の15.6%に当たる4万人が栄養不足に陥っていた。
6月27日時点でスウェーデンの新型コロナによる死者は5280人、人口100万人当たり523人だ(ノルウェー46人、デンマーク104人、フィンランド59人)。周辺国にできたことがなぜスウェーデンにはできなかったのか。
誰に聞いても納得のいく説明はない。スウェーデンの介護施設のほうが入所者の年齢が高いからとか、施設の規模が大きいからとか。ステファン・ロベーン首相は緊急対応のリソース確保は各地域の義務だと主張。ヨハン・カールソン公衆衛生庁長官はケアスタッフの準備不足の証拠を示されて、驚いていると語った。
どれも真実だろう。誰もが失敗を認めても過失を認めないのは歯がゆいが、責任転嫁は無意味だ。ロベーン政権が政治的介入をせず専門家に任せたのは正しいが、どんなに優れた指導者でも構造的欠陥は数カ月では直せない。
現在の危機を招いた責任は、地方任せにしてきた政府と、何より、最も脆弱な人々を守るという最大の使命を忘却した社会民主主義体制にある。
<本誌2020年7月7日号掲載>
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