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【IT企業幹部・厚切りジェイソン】アメリカの営業マンが外回りせずに2億円稼ぐ理由

WHY JAPANESE SALESPEOPLE!?

2020年7月21日(火)19時12分
藤田岳人(本誌記者)

――アメリカ企業では、営業のプロセスにおける分業や役割分担は進んでいるのか。
提案する人、その後の運用やサポートをする人、入金関係の人など、アバウトな目的によってはっきり分かれている。提案から契約までいけば、そこで営業マンの仕事は終わり。コミッションが発生すれば、それ以上のサービスは営業マンの責任ではない。それに営業マンは転職が激しいので、運用が始まるまでや運用している間に会社からいなくなっている可能性が高い。

――あまりチームで提案するという形ではないようだ。
アメリカのほうが個人プレーだと思う。日本だと社長や、プロジェクトのキーパーソンとなる技術者などが営業の現場に出てきてくれることがあるが、アメリカは完全に個人。上司を紹介してしまうと、その案件のコミッションが上司に入るので紹介したくない。

日本は給料に占めるコミッションの割合が低い会社が多いので、そういう意識が薄い。僕が前にいたアメリカ企業のトップ営業マンは年収2億円だった。しかもそれを社外にもアピールしていた。他社の優秀な営業マンを誘うためだ。

――アメリカでは営業のスキルは社内で共有されるか。
基礎的なトレーニングはあるが、あまり共有しないと思う。仕事ができなければクビになって終わりで、2億円稼ぐ人にやり方を聞いても教えてくれないだろう。

――なぜ日本とアメリカで、これほど違うのか。
最大の原因は評価制度だろう。日本企業も生産性をベースにした評価制度にして、給料がそれに応じて決まるのであれば、すぐに変わるはず。例えば評価が労働時間で決まるのであれば、非効率なほうが給料をもらえることになる。

――では、日本のやり方のいい面は何だと思うか。
会社同士で、長く付き合えるメリットはある。例えば10年単位で、今はこの商品をこう使っているから将来的にこんな商品があればこんなことができるようになる、という長期的な提案は、日本のほうが生まれやすいのではないか。

アメリカは目の前の商品だけを見るし、営業マンはそれだけを売り、それが運用に至ればそれで終わり。あまり長期的には考えない。

――新型コロナは、アメリカの営業手法に影響を与えたか。
業界にもよるが、日本ほど影響を受けていない。もともとリモートだったからだ。クラウドのビジネスだと、変える必要はほとんどない。

ただ僕が働く会社の場合、毎年、新規顧客を開拓していた展示会が中止になった影響はこれから出てくる可能性がある。既に営業を開始していたり、プロジェクトが動いているものはリモートで対応できるが、新規に提案する相手を探す方法は考えなければならない。

――日本でも、リモートワークをやってみたら意外とできたという声はよく聞かれる。
そう。それによってコロナが終わった後も、効率よく仕事ができる環境につながればいいと思う。別に東京に全てが集まる必要はなくて、もっと広々とした自然豊かな所で働ければ魅力的だ。業界によって向き不向きはあるだろうが、いろいろなやり方があるという認識が広まるのは、いいことだと思う。

<2020年7月28日号「コロナで変わる 日本的経営」特集より>

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2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。

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