ブラック・パンサーの敗北がBLM運動に突き付ける教訓
THE LONG HISTORY BEHIND BLM
この記事を書くに当たり、ウェブサイトを通じて取材を申し込んだが、BLM運動の代表者には接触できなかった。メディアの取材などにすぐに応じられる代表者なり広報担当がいないことは問題だと、サトゥルは指摘する。「対外的な窓口はどこなのか。説明責任を明らかにしないと。どこで物事が決まっているのか、誰もが疑問を持ち始めている」
さらにサトゥルが危惧するのは、警察の暴力に抗議するデモで、一部の参加者が暴徒化する傾向が目につくことだ。警察がひそかに抗議集会に入り込み、暴力を唆している場合もあると思われるが、こうした暴力騒ぎがあると、BLM運動が効果的な広報活動を行っていないこともあって、一般の人々が運動に反感を持ちかねない。「彼らはこうやって運動をつぶす......デモ参加者を犯罪者に仕立てるのだ」
既に人種差別や植民地化の歴史と関連がある記念碑や彫像の破壊は、歴史家やジャーナリスト、政治家を嘆かせ、BLM運動に対する批判が高まりつつある。
政権の狙いは反乱法の発動か
BLM運動の著名な支持者の1人で、資金集めも行っている活動家のショーン・キングは6月23日、伝統的な白人のイエス・キリスト像は「白人優位主義の抑圧の道具であり、撤去すべきだ」とツイートした。キングによれば、これに対し「殺してやる」という脅迫コメントが約500件寄せられた。
BLM運動が組織的なまとまりを欠くことは、指導権争いが起きたときに問題になると、サトゥルは言う。運動には寄付が寄せられているが、資金集めをするなら使途を明らかにしなければならない。
実はキングも警察の暴力の被害者と遺族を支援するため、これまでに3450万ドルの資金を集めてきたが、主流のメディアや反対派から不正会計疑惑を指摘され、非難の嵐にさらされた過去がある。昨年行われた監査で疑惑が解消し、「(不正疑惑は)完全な捏造だ。常にそうだった」と、ネット上で宣言したばかりだ。
ニュースサイトのバズフィードによれば、「BLM基金株式会社」なる団体が何百万ドルもの寄付金を集めているが、BLM運動とは全く関係がない。
サトゥルが最も懸念するのは、ドナルド・トランプ米大統領に容赦なくデモを取り締まるようハッパを掛けられた警官隊に、デモ参加者が恐れげもなく立ち向かっていく事態だ。「白人黒人を問わず、今の人たちは昔のデモ参加者のように警察を恐れない」と、彼は言う。「すぐさまけんか腰になる。不必要に人が死ぬ事態は避けなければ。このままでは人々が殺され、撃たれることになる。そうなれば(彼らの)思うつぼだ。(トランプは)1807年制定の反乱法の発動を宣言したいのだ」
反乱法が発動されれば、トランプは反乱鎮圧のためと称して「陸海軍を動員する権限」を行使できる。
<2020年7月7日号「Black Lives Matter」特集より>
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