中国を批判すれば日本人も捕まるのか?──香港国安法38条の判定基準
国家安全保障法を宣伝する香港政府の広告(6月29日) Tyrone Siu-REUTERS
香港国安法第38条に基づき香港以外で中国批判をした外国人も逮捕されるのではないかという不安と怒りが世界を覆っている。そこで、何をすれば処罰しようと考えているのかを、本法本条項の判定基準を考察したい。
第38条とは
香港国家安全維持法(以下、香港国安法)第38条には、以下のようなことが書いてある。
──香港特別行政区の永住権を有しない者が、香港特別行政区外で、 香港特別行政区に対して、本法が規定した犯罪を実施した場合、本法を適用する。
たったこれだけの条文だが、曖昧模糊とした不確定性が人々に強い警戒感を与えている。そこで一つ一つ噛み砕いて解釈してみよう。
まず「永住権を有しない者」とは、基本的には香港(=中華人民共和国香港特別行政区)から見た「外国人」ということになるので、私たち一般日本人もその範疇に入る。分かりやすいように、日本人を例にとって話をすることにしよう。
私たちが、たとえば日本で「本法が規定した犯罪を実施した場合」には、香港国安法を適用し処罰の対象となると、第38条は言っているのである。
但し、インターポールなどを通して国際指名手配されている場合を除けば、どの国にも外国の捜査権は及ばないから、香港や中国大陸の警察が日本に来て逮捕したりすることはできないのは論を俟(ま)たない。
しかし、中国大陸あるいは香港の「領土領海」内に入った時には香港・中国側が権力を行使するので、日本人など外国人は、香港の空港をトランジットなどで使う時も、「場合によっては」用心した方がいいことになる。ファーウェイの孟晩舟がカナダで拘束されたことを考えると、これは多くの国がやっていることではある。
たとえば日本の刑法第二条には「日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する」として「内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助の罪」とか「外患誘致」あるいは「外患援助」・・・などが列挙してあり、この「すべての者」に香港国安法と類似の処罰対象者が掲げてある。つまり、日本国に何かしら悪いことをしようとした「すべての者」の中には「日本から見たすべての外国人」も入っているのである。
判定基準
ただ中国の場合は、中国大陸(北京政府)の法規の不透明性があるので、世界は激しく反発するわけだ。
その意味で、「本法が規定した犯罪を実施した場合」とはどういう場合なのかを考察するのは非常に重要であろうと考える。