最新記事

中国

中国を批判すれば日本人も捕まるのか?──香港国安法38条の判定基準

2020年7月17日(金)17時57分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

これは7月7日のコラム「習近平はなぜ香港国家安全維持法を急いだのか?」に書いたように、「国家分裂罪、国家転覆罪、テロ活動罪、外国勢力と結託し国家安全を害する罪」の「4つの罪」のいずれかに抵触した場合を指すとみなすといいだろう。

「国家分裂罪」は、たとえば「台湾独立、香港独立、チベット独立、ウイグル独立...」など、中国が「一つの中国」として「中華人民共和国」の行政範囲内だとみなしている地域の独立を掲げて運動を起こした時の罪を指す。

「国家転覆罪」は「中国共産党による一党支配体制」を転覆させようとしたときの罪を指す。

「テロ活動罪」は説明するまでもないだろう。

「外国勢力と結託し国家安全を害する罪」とは、ストレートに言えば「香港市民がアメリカの民主団体や基金の支援を得て国家分裂や国家転覆などを目論むこと」を指している。そもそも香港国安法は、7月7日のコラム「習近平はなぜ香港国家安全維持法を急いだのか?」に書いた通り、コモンローを導入したことによる弊害から逃れようとするもので、中でもかつてのコモンウェルスの国々の中で今では最も強大となったアメリカの影響から逃れようとするものだ。

したがって、日本人など外国人が何をしたら、この「4つの罪」を犯したことになるのかは、このことから自ずと明らかになるのである。

以下に「北京」がほぼ確固として抱いている判定基準を示す。

1.香港独立や台湾独立などを叫んで大衆に呼びかけ、団体を作って扇動活動を行うこと。

2.香港市民あるいは団体などに抗議運動を行うよう、その支援金を供与すること。「抗議運動」の中に「国家分裂、国家転覆、テロ活動」などが含まれていれば、完全に香港国安法の対象となる。

こういった内容に関わってない限り、どんなに個人で、海外で(例えば日本で)中国批判を行なおうと、それは処罰の対象とはならない。たとえば筆者が「習近平を国賓として日本に招聘してはならない!」といくら書こうと、それは処罰の対象にはなり得ないのである。

しかし仮に日本人の某氏が日本で「香港を独立させよう!」というスローガンを掲げて民衆に呼びかけ、団体を立ち上げて大きな運動のうねりを形成するようなことをすれば完全にアウトだ。街角に立たずにネット空間で賛同者を集めて社会的影響を与えた場合でも、もちろんアウトである。そのような場合は、万一にも香港や中国大陸に行ったり、あるいはその関連空港をトランジットに使ったりなどしたら、即刻逮捕されるだろう。中国と犯罪者引き渡し条約を結んでいる国に行っても危険だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪賃金、第1四半期は前期比+0.8% 市場予想下回

ビジネス

仏成長率、第2四半期は小幅に 5月に休日多く=中銀

ビジネス

インフレなお高水準、まだやることある=カンザスシテ

ワールド

アルゼンチン中銀、政策金利を40%に引き下げ イン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中