被告警官の釈放を被害者が要求 インドネシア、政治の闇が垣間見える裁判の行方は
被害者が2被告釈放要求の異例
そんななか被害者であるノフェル捜査官は、求刑直後に「この禁固1年という異例に軽い求刑に失望している。この裁判が単なる形式的なものであることを証明している」とコメント。さらにSNSを通じて「事件の背後関係を明らかにする必要があるとは思いませんか」とジョコ・ウィドド大統領に疑問を示した。
ノフェル捜査官の裁判を支援している団体も求刑を受けて「過酷な犯罪への軽い求刑は2被告が単なる人形に過ぎないからだ」と裁判そのものを批判している。
さらにツイッターを通じてノフェル氏は「目撃者に私が尋ねた結果も2被告は犯人ではないといっている。このまま裁判をとりつくろって続けるより、2被告をすぐに釈放するべきだと私は思う」とまで話している。
この裁判の異例の展開は「襲撃事件の黒幕の存在」を誰もが感じながら、それを暴くことができないもどかしさに満ちながら進んでいることは確実で、国民の不満、怒りももって行き場がないというのが現実である。
2被告の禁固1年が確定して、逮捕後の未決拘留期間の算入が認められれば、2被告は早ければ年内にも釈放される可能性があるという。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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