中国の感染症対策改革、専門家は効果を疑問視 「必要なのは検閲の中止」
中国政府は5月下旬、将来のウイルス感染拡大に備えて、同国の疾病対策センター(CDC)の権限を強化する改革を打ち出したが、国内外の一部の専門家からは、効果は限定的ではないかとの声が出ている。写真は北京で21日撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)
中国政府は5月下旬、将来のウイルス感染拡大に備えて、同国の疾病対策センター(CDC)の権限を強化する改革を打ち出したが、国内外の一部の専門家からは、効果は限定的ではないかとの声が出ている。
新型コロナウイルスの流行を巡っては、情報隠蔽とソーシャルメディアの検閲が感染を広げる要因になったとの見方が多いが、今回の改革ではそうした問題に完全には対処できないという。
北京のCDCで副責任者を務めていたYangGonghuan氏は「(地方政府が)感染拡大に伴う社会不安を危惧することが中国の最大の問題だ」と指摘。「このため地方政府は、報道機関や(新型コロナにいち早く警鐘を鳴らし、その後感染により死亡した医師である)李文亮氏のような人物に情報を広めてほしくないと考える」と述べた。
新型コロナは1月初旬に初めて特定されたが、中国当局が湖北省武漢市を封鎖するまで16日かかった。国家衛生健康委員会の馬暁偉主任も今月、ウイルス対策で「一部の問題と欠点が露呈した」ことを認めたが、詳細には触れなかった。
中国政府は、こうした問題に対応するため全国で公衆衛生対策の調整を行うCDCの権限を強化し、CDCが迅速に感染症の発生を特定し、対処できる体制を整えると表明。CDCがこれまでよりも医療機関から情報を入手しやすくする体制を整備する方針も示した。
ただ、こうした一連の改革は、現時点では指針案にとどまっており、施行時期や予算などの詳細は不明。海外では改革に懐疑的な見方が浮上している。
米国のシンクタンク、外交問題評議会の公衆衛生専門家、YanzhongHuang氏は「重症急性呼吸器症候群(SARS)と新型コロナ感染症の感染拡大で非常にはっきりしたのは、政治的な問題と制度上の問題で政府の対応能力が低下したことだ」と述べた。
英国のサザンプトン大学は、武漢市があと2週間早く封鎖されていれば、最大で感染を95%減らせた可能性があると試算。医療専門家からはCDCの独立性をさらに高めるべきだとの声が出ている。
清華大学の法学教授で中国政府のコロナ対策諮問委員会のメンバーを務めたWangChenguang氏は「感染情報を入手したCDCが、独立した客観的な調査を実施できる体制を整える必要がある」と主張。
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