闇に消される東南アジアの民主活動家たち
Southeast Asia’s Desaparecidos
これらの事例から明らかなように、活動家や民主化を求める反体制派は自国内で行方不明になっているだけではない。失踪は外国でも起きており、多くの場合は地元政府が共謀している。
現に、カンボジア政府はワンチャルームの失踪事件の捜査について、はっきりしない態度を見せている。カンボジアの独立系メディア、ボイス・オブ・デモクラシーが6月5日に掲載した記事で、内務省のキュー・ソピーク報道官は政府による捜査は行われないと示唆した。
「タイ(当局)が自国市民の拉致について苦情を申し立てた場合は(捜査を)する」と、ソピークは発言。「タイ大使館から苦情の申し立てがないなら、何をすべきなのか?」
6月9日になってカンボジア政府は態度を翻し、捜査の意向を表明した。ただし、ワンチャルームは2017年から同国に不法滞在していたと、政府側は主張している。
カンボジアやベトナム、ラオス、タイはそれぞれ、抑圧的な政府の支配下にあるだけではない。これらの国は今や、市民の抑圧に当たって相互依存関係にある。
各国は他国から亡命してきた反体制派の所在を特定しており、一説によれば、他国の工作員が入国して亡命者を拘束するのを黙認している。その結果、安全な亡命先を求める反体制派は東南アジアを離れることを迫られている。
抑圧的政府の立場で見れば、これは賢いやり方だ。
大半の民主活動家や反体制派には、故国からそれほど遠くなく、より安全なシンガポールや台湾、韓国に拠点を移すだけの経済的余裕がない。彼らの多くが選ぶのは近接する国へ逃れる道だ。それなら何かあればすぐに帰国できるし、同胞に交じって暮らすこともできる。タイには大規模なカンボジア人コミュニティーが存在し、ラオスには多くのタイ人が、タイには多くのラオス人が住んでいる。
もう隣国も安全でない
だが反体制派が隣国で安全を確保できない(または安心できない)環境をつくり出すことで、東南アジアの抑圧的政府は彼らをより遠くへ追いやろうとしている。
航空機でしか行けない場所なら、帰国は簡単に阻止できるし、同国人との交流は容易でない。反体制派亡命者なら誰もが知るように、外国にいる年月が長いほど、とりわけ距離が遠いほど、故国の一般市民や現実とのつながりは失われていくのが常だ。
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