最新記事

ヘイトクライム

今度は殺害された黒人6人の写真が吊るされた

Photos of Breonna Taylor, Ahmaud Arbery Found Hanging From Nooses in Park

2020年6月24日(水)17時40分
メーガン・ルース

全員が最近警察などの手で殺された黒人ばかり The Original Black Panthers of Milwaukee/FACEBOOK

<黒人差別に対する抗議デモが続く一方で、黒人に対するヘイトや暴力事件は増加している>

警官や白人に殺された黒人6人の写真、公園の木に吊るしたロープの先に括り付けてあるのが見つかった。かつての黒人に対する凄惨なリンチを想起させる首吊り用のロープだ。

現場となったウィスコンシン州ミルウォーキー郡の保安局は、同郡のリバーサイド公園に写真を吊るした容疑者について、市民からの情報提供を求めている。

犯行のあった6月20日にフェイスブックに投稿された動画には、黒人の人権団体「オリジナル・ブラックパンサー」ミルウォーキー支部のメンバーが、木から写真とロープを外す様子が映っている。

「ロープに括られた黒人の写真は耐えられないし、許されない」と、動画の説明にはある。「この憎悪に満ちた行為を正当化しようとする者がいたら、それこそが問題だ!」

被写体の1人はブリオナ・テイラーだ。26歳のテイラーは2020年3月、ケンタッキー州ルイビルの自宅アパートで就寝中に、踏み込んできた警官に射殺された。一緒にいた恋人が侵入者と思い発砲したからだ。別の1人、25歳の男性アマド・オーブリーは2月下旬の早朝、ジョージア州グリン郡で自宅近くをジョギングしているときに、彼を不法侵入者と勘違いした白人男性2人に射殺された。

彼らの暴力的な死は、3月25日に46歳の黒人男性ジョージ・フロイドがミネアポリス警察の手で拘束死した事件をきっかけに全米に広がった抗議運動を勢いづけている数え切れないほどの死のうちの2例にすぎない。

警官に殺された者が多い

ほかの4人、エリック・ガーナ―、マイケル・ブラウン、トレイボン・マーティン、ボサム・ジーンも、人種差別による暴力の犠牲者だ。ガーナー、ブラウン、ジーンはいずれも、過去6年のあいだに警官の手で殺された。17歳だったマーティンは2012年に、近所の自警団員に射殺された。

ミルウォーキーの法執行当局がこの事件の捜査を進める間にも、黒人に対するヘイトや暴力の報告件数が全米で増加している。6月上旬にはカリフォルニア州パームデールで、24歳の黒人男性の遺体が木から吊るされた状態で見つかった。その10日前には、わずか約160キロと離れていない場所で、別の黒人男性の遺体が、同じく木から吊るされた状態で見つかっていた(いずれの事件の場合も、当局はよく調べもせずに自殺と断定したが、市民から激しい抗議を受け、再捜査を行っている)。

ミルウォーキー郡保安局の報道担当・地域対応の責任者を務めるフェイス・コラスは本誌に対し、リバーサイド公園に吊り下げられたロープについては、現時点でこれ以上の詳細は提供できないと話した。

(翻訳:ガリレオ)

【話題の記事】
木に吊るされた黒人男性の遺体、4件目──苦しい自殺説
自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされた黒人の遺体発見が相次ぐ
宇宙に関する「最も恐ろしいこと」は何? 米投稿サイトの問いかけにユーザーの反応は
街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...

20200630issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ガザ「大量虐殺」と見なさず ラファ侵攻は誤り=

ワールド

中韓外相が会談、「困難」でも安定追求 日中韓首脳会

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、今週の米経済指標に注目

ビジネス

米国株式市場=S&P横ばい、インフレ指標や企業決算
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子高齢化、死ぬまで働く中国農村の高齢者たち

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 7

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    あの伝説も、その語源も...事実疑わしき知識を得意げ…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中