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感染症研究

コウモリコロナウイルス研究への助成中止、政治の気まぐれ介入に科学者は猛反発

2020年5月27日(水)20時00分
松岡由希子

<コウモリコロナウイルスの解明をすすめている研究への助成が突然中止され、科学者たちは「科学は政治的な駆け引きに影響されるべきではない」と主張している>

米非営利団体「エコヘルス・アライアンス」は、1971年の創設以来、新興感染症から人々の健康と野生動物を守るべく、グローバル規模で様々な研究に取り組んできた。2008年以降は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)から助成金を得、コウモリコロナウイルスの解明をすすめている。しかしこのほど、アメリカ国立衛生研究所からの助成が突然中止され、米国の科学者から「科学は政治的な駆け引きに影響されるべきではない」と反発の声があがっている。

助成金を得た中国のウイルス学者が所属する武漢の研究所を疑って...

1975年から2019年までにノーベル生理学・医学賞、化学賞、物理学賞を受賞した米国のノーベル賞受賞者77名は、2020年5月20日、エコヘルス・アライアンスへの助成中止の決定を再考するよう求める公開書簡をアレックス・アザール保健福祉省長官とアメリカ国立衛生研究所のフランシス・コリンズ所長に送った。

この公開書簡では、助成中止の決定に対して「科学の行為を妨害するという由々しき先例をつくり、研究活動への助成プロセスの信頼性を脅かすものだ」と強く非難したうえで、「直ちに、助成中止の決定に至ったプロセスの徹底的なレビューを実施し、適切な措置を講じるよう求める」と要望している。

現時点で客観的な証拠は確認されていないものの、米国の保守派の政治家や一部メディアでは「アメリカ国立衛生研究所の助成金を得た中国のウイルス学者が所属する武漢の研究所こそ、新型コロナウイルスの流出源ではないか」との説が取り沙汰されている。

このような動きを受けて、ドナルド・トランプ大統領は、4月17日の記者会見で「助成を速やかに中止する」と述べた。

米科学誌サイエンスによると、この記者会見から1週間後の4月24日、アメリカ国立衛生研究所は「エコヘルス・アライアンスの研究成果は、助成の目的やアメリカ国立衛生研究所の優先事項に沿ったものではない」として、助成を中止する旨をエコヘルス・アライアンスに伝えたという。

コウモリのSARS関連ウイルスの研究などで評価されていた

エコヘルス・アライアンスは、アメリカ国立衛生研究所の助成のもと、これまでに20本の研究論文を発表。2018年2月にはコウモリのSARS関連ウイルスのヒトへの感染を血清学的に証明するなど、これまでの研究成果は高く評価されている。

ノーベル賞受賞者たちの公開書簡を支持する動きは、米国の科学者コミュニティに広がっている。米国生化学・分子生物学会(ASBMB)や米国ウイルス学会(ASV)、米国遺伝子学会(GSA)ら、31の研究者団体は、5月20日、エコヘルス・アライアンスへの助成の中止に至った意思決定プロセスの透明化を直ちにはかるよう促す公開書簡をコリンズ所長に送付している。

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