全人代「香港国家安全法案」は米中激突を加速させる
広東省や隣接する香港を中心に全世界に広がり、2003年7月5日なってWHOはSARSの終息宣言を行った。
香港ではその4日前の7月1日、香港返還6周年に当たり国家安全法案(基本法第23条改正)に対する激しいデモが展開され、遂に改正法撤廃に追い込んでいる。
2003年も2020年も、「新型コロナ肺炎」収束と同時に強行する「国家安全法」に関する北京のやり方は変わっていない。
アメリカが激しい対中攻撃
違うのは、今般は香港政府に任せず、中国中央政府が強制的に断行してしまうことである。
「一国二制度」は「一国」が優先し、中華人民共和国憲法の下で「二制度」があるというのが北京のスタンスだ。
これに対してアメリカは対中非難を激化させている。
トランプ大統領は全人代が始まる前日の21日、香港へ国家安全法を導入すれば「強力に対処する」と警告しているし、ポンペオ国務長官は22日、「香港の自治に死を告げる鐘」になると非難した(CNN報道)。
しかし「~すれば」ではなく、当該法案は必ず全人代閉幕までに採決される。つまり、成立してしまうのである。
アメリカに今できる対中制裁としては、差し当たって昨年11月にトランプ政権で成立した「香港人権民主法」がある。香港の民主化運動の弾圧を北京が続ければ、アメリカは「香港人権民主法」に基づき、「一国二制度」を前提として香港に認めている関税やビザに関する優遇措置存続の是非を見直し、同法を発動することができる。そうなれば貿易投資や金融に関して香港は特別な地位を失うことになる。
24日午後、中国の王毅外相は記者会見で、米中関係を「新たな冷戦の瀬戸際」へと押しやっているのはアメリカだと、記者の質問に回答したが、違うだろう。
COVID-19の世界的感染と言い、香港への人権弾圧と言い、「真犯人」は「中国」であり「習近平」だ。
たしかにアメリカの感染者の数は、実に心が痛むほどに増加の一途をたどって150万人を超えており、海軍などの米軍兵士にも感染者が増加している。
しかしアメリカは5月20日、United States Strategic Approach to The People's Republic of China(アメリカの中国に対する戦略的アプローチ)を発表した。この報告書は2019年に出された国防許可法を基礎にして、中国に対処するアメリカの戦略を「経済、価値観、安全保障」といった側面から根本的に見直すとしたものである。