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日本政治検察庁法改正案見送りの裏事情 自民幹部も「側面支援」か
政府は、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案の今国会での成立見送りを決定した。写真は安倍首相。14日都内での代表撮影(2020年/ロイター)
政府は18日、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案の今国会での成立見送りを決定した。野党側は世論の強い反対を受けた成果としているが、与党内にも異論が多く、与党幹部らも強行採決の阻止を図っていたのではとの見方が浮上している。安倍晋三首相肝いりの重要法案見送りは異例で、このような与党幹部の動きは首相の求心力に影響を与えそうだ。
安倍首相は18日午後、自民党の二階俊博幹事長と会談し、改正案の見送りを決定。その後記者団に対して「さまざまな批判をいただくなかで国民のご理解をいただきながら進めていくことが肝要だ」と説明した。継続審議とし、秋の臨時国会で審議する意向だ。
改正案は一般職の国家公務員の定年を65歳に引き上げる国家公務員法改正案との束ね法案として一本化して衆院内閣委員会で審議してきた。検察幹部は内閣や法相が必要と認めれば最長3年延長できる特例規定を設けた。野党は国家公務員の定年延長には賛成の立場だが、特例規定は恣意(しい)的な人事を招くとして批判。野党は15日の衆院内閣委員会で、武田良太行政改革相の不信任決議案を提出し、政府・与党は同日の委員会採決を断念していた。
ある与党議員によると、政府・与党側は15日の委員会で「強行採決が可能であった」にもかかわらず、それをせず、野党側の不信任決議案提出を許したのは、「二階幹事長や菅義偉官房長官ら自民党幹部らの意向があったとしか考えられない」と指摘する。
不要不急の法案に国民の6割以上が反対
そもそも検察庁法改正案は、1月に安倍内閣が「検察庁の業務遂行上の必要性」を理由に、東京高検検事長の黒川弘務氏の定年を半年延長する閣議決定をしたのを受け、その法的裏付けとして法務省が提出したように外形的には見える。武田行政改革相は「黒川検事長の延長追認ではない」と説明しているものの、新型コロナウイルスによる経済収縮への対応が急務となっている現状、多くの国民にとって不要不急の法案となっており、各メディアの世論調査でも法案反対が6割以上の多数となっている。
与党内でも異論が多数出た。元新潟県知事の泉田裕彦衆院議員が強行採決なら退席すると表明し、衆院内閣委員会のメンバーから外された。石破茂元幹事長も「国民の納得、理解をいただける状況とは全く思っていない」と述べたほか、岸田文雄政調会長も「国民の関心の高まりを軽々しく考えてはならない」と政府に注文を付けていた。公明党でも伊佐進一衆院議員が「検察庁法案改正はクロかシロか」とのブログを掲載、「疑義が呈される状況になっているということ自体、政府や政権与党である我々の責任」と指摘している。
4月には新型コロナに対応した2020年度第1次補正予算を閣議決定した後に、公明党の強い意向で、困窮者に対する30万円給付が国民一律10万円給付に差し替えられた。閣議決定後の予算案修正は異例。30万円給付を主導した岸田政調会長は「ポリティカルキャピタル(政治的資源)に傷がついた」(経済官庁)との見方が出た一方、与党関係者は「国民の声に敏感な二階幹事長に公明党が頼った格好だ」と解説する。
予算案差し替えを巡り「菅官房長官は一貫して沈黙を守っていたが、検証が必要」(自民中堅)との声がくすぶり続ける中で、再び起こった重要法案見送りという軌道修正。首相と与党幹部の関係にあらためて注目が集まっている。
(竹本能文 編集:内田慎一)
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