感染者急増するロシアはコロナ対中包囲網にどう対応するか──モスクワ便り
二つの目の選択肢は国連にある国際司法裁判所に訴える方法で、これは国連憲章第94条などに規定されている。94条の1によれば、「各国際連合加盟国は、自国が当事者であるいかなる事件においても、国際司法裁判所の裁判に従うことを約束する」となっているので、もちろん「国家が国家を訴えることは可能」である。
もっとも、ハーグの仲裁裁判所と違って被告側に相当する国(今の場合は中国)が「受けて立つ」と表明しなければ、そもそも裁判が成り立たない。
万一にも中国が「受けて立つ」と意思表明し、裁判が進む場合、94条の2には「事件の一方の当事者が裁判所の与える判決に基いて自国が負う義務を履行しないときは、他方の当事者は、安全保障理事会に訴えることができる。理事会は、必要と認めるときは、判決を執行するために勧告をし、又はとるべき措置を決定することができる」とある。すなわち「従わない場合は国連の安全保障理事会に訴えることができる」のである。
したがって現在のコロナの状況で言うならば、アメリカなど8ヵ国が「国家」として「中国」を訴えて裁判が進行し(判決が出ても)中国が従わない場合は、安保理に訴えることができるので、オランダ・ハーグと違い「強制力」を持っているわけだ。
ところが、国連憲章第27条の3には「その他のすべての事項に関する安全保障理事会の決定は、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われる。但し、第6章及び第52条3に基く決定については、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない」とある。
となると、気になるのは安保理常任理事国のロシアの態度である。
「モスクワの友人」を取材:感染者が急増しているロシアはどう対応するか?
そこで早速、プーチン大統領の側近らとも接触のある「モスクワの友人」にインタビューを試みた。
遠藤:コロナは全人類に未曽有の災禍をもたらし、ロシアも最近では感染者が急増していますが、さすがに蜜月関係にあるプーチンも習近平を恨み、西側諸国が起こしている訴訟の輪に加わるという動きはありませんか?それとも原油安が進む中、石油を買ってくれる国として蜜月関係は崩れませんか?ここが崩れるとアフターコロナのパワーバランスに影響を与えると思うのですが...。