最新記事

韓国 

韓国ではじまった「ニューノーマル」 コロナ封じ込め成功の要因とこれから

2020年5月8日(金)17時00分
佐々木和義

さらに大邱は首都圏との日常的な人的交流がそれほど多くはない。人口の4割が集中する首都圏で感染が広がると、首都はロックダウンに追い込まれかねない。新天地教会の感染が収束したあと、感染は海外からの入国者に移行したが、政府が大邱地域をロックダウンの一歩手前である「特別管理地域」に指定して以後、首都への流入が制限され、対策を講じる時間ができた。

大韓病院協会が主管したオンラインカンファレンスで、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の経験が有効に作用したという声や政府による個人情報管理を指摘する意見も述べられた。

秋冬の再流行に備え、専門調査員の人員不足が問題に

いっぽう、このカンファレンスで、秋から冬にかけて大流行する危険性に備えるべきという声が上がった。
理事長は患者のデータ管理が十分にできていないと発言した。中国は2か月あまりで臨床データや患者データを確保したが、韓国はデータ管理や論文など、現場と研究の連携ができておらず、自治体によって対応に大きな差があったと指摘した。またソウル市は感染者1人1人の詳細な行動履歴を公開したが、行き過ぎた人権侵害であり、人権に敏感な国は別なアプローチが必要という意見である。

防疫当局は秋冬の新型コロナウイルス再流行に備え、保健所や診療所など約1000か所の「呼吸器専門クリニック」を設置すると明らかにしたが、一方で専門調査員の人員不足が問題になっている。

疾病管理本部は2月に疫学調査官を募集したが、4人の採用予定に対し、実際に採用できたのは2人だけだった。3月の2次募集は8人の採用を予定したが、1人しか採用できなかった。医師免許を有する調査官は定員13人に対して6人しかいない。医師免許を有しない調査員も定員割れが続いている。

新型コロナウイルスの1日あたり感染者が200人に達した2月半ば、保健福祉部は調査員を増員すると大統領に報告し、120人余を募集したが採用できたのは71人だった。調査員は契約職で2年ごとに更新する。使命感や高い年俸だけで増員することは難しく、契約延長や昇進を含む人事システムの見直しが必要だと専門家は指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、日本などをビザ免除対象に追加 11月30日か

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

ゴールドマン、24年の北海ブレント価格は平均80ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中