最新記事

スウェーデン

コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」

Sweden's COVID-19 Death Toll 'Horrifying' Says Scientist

2020年5月8日(金)14時40分
スー・キム

コロナ流行の最中、テラス席で日差しを楽しむ人々(ストックホルム、3月26日) Janerik Henriksson/REUTERS

<厳しい封鎖措置を取らずに集団免疫獲得を目指す政府の方針は正しかったのか>

新型コロナウイルス対策で厳しいロックダウン(都市封鎖)を行わないという独自路線を貫くスウェーデン(人口1千9万人)では、5月7日の時点で同ウイルスの感染者が少なくとも2万4623人、死者の数は3040人に達している。

この状況についてスウェーデン公衆衛生局の疫学者アンデシュ・テグネルは6日の記者会見で、「死者数3000人だ。これは恐ろしい数字だ」と語った。

テグネルは同国の新型コロナウイルス対策の責任者で、これまではロックダウンを行わない政府の決断を支持してきた。だが今では、反ロックダウン戦略が最善の選択肢だという考え方に「納得はしていない」と認めている。

「まったく納得はしていない。何が最善策なのか、いつも頭を離れない」。テグネルは首都ストックホルムに拠点を置く日刊紙アフトンブラデッドにこう語った。

北欧諸国の中で、スウェーデンは新型コロナウイルスの死者数が群を抜いて多い。米ジョンズ・ホプキンズ大学の最新の集計によれば、他の北欧諸国の死者は、デンマークが514人、ノルウェーが217人、フィンランドが255人だ。スウェーデンは人口が倍あることを考えても、その死者数は群を抜く。

高齢者施設でもマスクせず

インペリアル・カレッジCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策チームの最新の予測によれば、スウェーデンの1日あたりの死者数は、5月11日までに150人近くにまで増える勢いで、4日からの1週間の死者数は最大1060人にのぼる見通しだ。感染爆発の道を辿っているようにもみえる。

スウェーデンは、感染者のいるヨーロッパの国で唯一、厳しいロックダウンを行っていない。ウイルスにさらされる人を増やして「集団免疫」を獲得し、感染拡大の第2波を防ぐというのが彼らの戦略だ。

だがこの方針には、国外だけでなく国内からも批判の声が上がっている。スウェーデン南部のルンドに暮らすアリソン・プランバーグ(33)は本誌のメール取材に対して、「スウェーデンの対応が適切だとは思わない。(大勢の死者が出ている)高齢者施設でさえ、マスク着用が推奨されていない」と述べた。

彼女はさらにこう続けた。「持病がある子どもさえ、感染した場合のリスクが高いと正式に見なされていない」

<参考記事>「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
<参考記事>新型コロナで都市封鎖しないスウェーデンに、感染爆発の警告

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中