経済活動の再開には「感染経路不明」を潰すことが不可欠
Without Tracing Exposure, “We’re Going to be in Big Trouble ”
経済活動の再開を求めるデモは全米に広がっている。メリーランド州の集会に参加した人々 Tom Brenner -REUTERS
<アメリカの一部では営業・外出制限の解除が始まったが、人が動けばウイルスも広がる。再び感染爆発を引き起こさないためには大規模な接触追跡が必要だ>
全米各地で経済活動の再開を求める声が高まるなか、一部の州は5月初めから徐々に外出制限などの緩和に乗り出し始めた。人々が職場に戻れば、それに伴ってウイルスも再び市中にばらまかれる。何も手を打たなければ、第2波の感染拡大が起き、ようやくひと息ついた医療現場はまたもや崩壊の危機に見舞われることになる。十分な医療を提供できなければ、死者数の急増は避けられない。
ロックダウン(都市封鎖)が解除されるたびにCOVID-19が暴れだし、またもや活動が制限される──人々を疲弊させる悪循環を防ぐには、接触追跡(コンタクト・トレーシング)が強力な武器になると、専門家は言う。誰かの感染が確認されたら、保健当局者がその人と濃厚接触した人物を突き止め、自主隔離を求める。小さな芽のうちに集団感染をつぶして、ニューヨーク市やニューオーリンズを襲ったような大規模な感染爆発を防ぐのだ。
各州知事は、経済再開と感染防止を両立させるため、大規模な追跡プログラムを導入し始めている。
<参考記事>「感染経路不明」を潰すため米各州が「接触追跡官」を数千人単位で募集
追跡に資金と人員を割け
しかし各州のばらばらな取り組みでは限界がある。第2波の封じ込めにはまさに戦時体制で保健スタッフを大量動員する必要があると、ジョンズ・ホプキンズ大学医療安全センターのクリスタル・ワトソン助教は言う。
ワトソンら保健政策の専門家チームの試算では、徹底した追跡を行うには、全米で10万人の専門スタッフと約36億ドルの資金が必要になる。チームは予算確保のため目下議会に働きかけて法案成立を目指している。
<参考記事>新型コロナウイルス、急拡大の背景に排泄物を介した「糞口感染」の可能性も
「予算をしっかりつけてほしい」と、ワトソンは言う。「全米規模での取り組みを早急に始めないと。追跡を行う州や地方自治体当局に、疾病対策センター(CDC)などの連邦機関が指針を示し、技術的な支援をする必要がある。そういう体制を整えることが(制限緩和の)条件になる」
追跡プログラムの効果と必要性についてワトソンに話を聞いた。