いまだに新型コロナ検査が脆弱な日本 「抑え込み成功」は運が良かっただけ?
検査は「十分ではない」
日本における新型コロナ対応の最前線となってきた保健所は、1990年代から数が半減している。一方、韓国は過去の感染症の経験を踏まえて公衆衛生体制を強化してきた。長時間の勤務と殺到する電話に苦しみつつ、日本の保健所は民間によるPCR検査を認めるよう政府に要望してきた。
日本政府は1日最大2万2000件のPCR検査能力があるとしているが、1日に行われている検査はその3分の1にも満たない約6000件だ。厚労省によると、その約75%は保健所や公的機関で実施されている。
全国保健所長会は5月6日付の書簡で加藤勝信厚労相に対し、検査方針を全面的に見直すよう求めた。そこには「現在、新型コロナウイルス感染症におけるPCR検査について、検査数の不足や検査目的の混乱が生じています」と書かれている。
一部の地方自治体は4月、地元の医師会の協力を得て、保健所を介さず検査を受けられるPCR検査センターの運用を開始した。
成果は出ていると厚労省
保健所の能力が限界を超える一方で、大学からは研究所の活用を申し出る声がある。
ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授は5月6日、動画配信サイトで安倍晋三首相と対談し、「大学などの研究所の力をうまく利用すればPCR能力は10万ぐらいいける可能性がある」と語った。
厚労省は山中教授の提案を歓迎する一方、さらなる検討が必要だとしている。
「非常時だから協力しようという話で、ありがたい。私たちのニーズと現場のオファーをよくマッチングして、協力いただけるのであれば、どんどん協力していただきたい」と、厚労省の迫井正深審議官は語る。
検査件数の少なさを問題視する専門家や研究者の中には、厚労省の医系技官が情報を掌握するため、民間機関と協力したがらないと指摘する声もある。
厚労省の官僚は保健所を通じて質の高いデータを集めたがっていると、キングス・カレッジ・ロンドンの教授で、世界保健機関(WHO)事務局長上級顧問の渋谷健司氏は言う。
厚労省は、医系技官が意図的に検査数を抑えているという見方を否定。これまでの手法は成果を上げているとの認識を示す。
医師が必要と判断した場合、PCR検査を実施することは重要だと、迫井審議官は言う。その上で、検査を受けやすくするため、3月から保険適用の対象になった点を指摘する。
「件数を伸ばしてゆくフレキシビリティに欠けるという点は分らなくもないが、行政で施策において検査結果を活用するという点では、今の形をやってゆくことが当面必要ではないかと考えている」と、迫井審議官は言う。
しかし、こうしたやり方を危惧する専門家もいる。
「(感染者数が欧米より少ないのは)政策が良かったというよりは、運が良かったと取ったほうが安全だと思う」と、群星沖縄臨床研修センターの徳田センター長は話す。
Ju-min Park 竹中清(翻訳:エァクレーレン 取材協力:Antoni Slodkowski、宮崎亜巳、村上さくら 編集:斎藤真理、久保信博)
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