最新記事

韓国

韓国政府、「K防疫」の成果を発信する最中に集団感染が再発

2020年5月18日(月)15時30分
佐々木和義

文在寅大統領は5月18日、光州市で光州民主化運動40周年記念式典に出席 Jung Yeonje/ REUTERS

<韓国政府が「K防疫」の成果を発信する最中、集団感染が発生。遊興飲食店には、事実上の営業禁止措置がとられている......>

ソウルの繁華街、梨泰院のクラブから感染が広がり、2次感染、3次感染を合わせた感染者数は5月15日時点で153人となった。大型連休中、全国の教職員が梨泰院を訪問していたことが判明し、政府は小中高校の登校再開を1週間延期、ソウル市は遊興施設に事実上の営業禁止を発令した。

文在寅大統領「韓国は防疫において世界をリードする国になった」

文在寅大統領は、2020年4月30日、新型コロナウイルスの感染縮小に関連し、SNSで国民への感謝を発信した。4月15日に行われた総選挙に関わる感染者は0人で、4月30日には海外からの入国者を含めた感染者も72日ぶりに0人を記録した。

5月10日に行った大統領就任3周年の特別演説で「韓国は防疫において世界をリードする国となり、『K防疫』は世界の標準となった」と成果を強調し、青瓦台(大統領府)と外交部は「K防疫」の対外広報を展開した。

5月11日には康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官が、米国、日本、韓国、豪州、インド、イスラエル、ブラジルの外相が参加した米国主催のテレビ会議で、韓国の対策は、広範な診断検査(Test)・疫学調査と感染経路の追跡(Trace)・迅速な治療(Treat)の「3T」だと説明して成果をアピールした。

ソウルの繁華街、梨泰院のクラブから集団感染発生

しかし、政府が「K防疫」の成果を発信する最中、集団感染が発生した。京畿道龍仁市で在宅勤務中の男性が5月6日に陽性判定を受け、感染ルートとして梨泰院のクラブが浮上した。男性は5月2日、同僚と梨泰院のクラブや酒場5軒をはしごしており、同行した同僚など接触者15人に感染が見つかったのだ。

ソウルの朴元淳(パク・ウォンスン)市長は5月14日、梨泰院のクラブから発生した新型コロナウイルスの集団感染に関連し、匿名検査で2万4000件余の検査が行われたと明らかにした。市はクラブで使用されたクレジットカードの情報や付近の基地局に接続した1万905件の携帯電話番号を入手して電話をかけ、電話に出ない人にはメッセージで検査を促した。検査を受けないクラブ訪問者には罰金を科す方針だ。

韓国教育部は5月13日から順次再開を予定していた小中高校の登校を1週間延期した。学校で感染が拡大する懸念が生じたのだ。4月29日から5月6日の連休中、ソウル市内の学校に勤務する外国語のネイティブ教師53人など、合わせて158人の教職員が梨泰院等を訪れていたことが確認された。

梨泰院は1945年以後、龍山基地に駐留した在韓米軍人相手の歓楽街として発展し、現在は世界各国の料理店や雑貨店などが軒を連ねている。週末になると韓国全土に居住する外国人や異国情緒を楽しみたい人々が集まってくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、ウクライナ支援の見積もり大幅減額─関

ビジネス

米小売売上高、3月1.4%増 自動車関税引き上げ前

ワールド

トランプ大統領「自身も出席」、日本と関税・軍事支援

ワールド

イランのウラン濃縮の権利は交渉の余地なし=外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 4
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中