最新記事

日本政治

新型コロナ対応の第2次補正予算、1次上回る規模に増額 背景に安倍政権の国会会期延長回避

2020年5月27日(水)17時04分

新型コロナウイルスに対応した2020年度2次補正予算は、国の財政支出を表す真水が33兆円程度と1次補正の規模を上回る巨額なものとなった。検察庁法改正案に対する世論の反発などで内閣支持率が急落し、国会の会期延長を回避したい安倍晋三首相(写真)の意向が反映されたとの見方が与党内にはある。5月14日、都内で代表撮影(2020年 ロイター/Akio Kon via REUTERS)

新型コロナウイルスに対応した2020年度2次補正予算は、国の財政支出を表す真水が33兆円程度と1次補正の規模を上回る巨額なものとなった。検察庁法改正案に対する世論の反発などで内閣支持率が急落し、国会の会期延長を回避したい安倍晋三首相の意向が反映されたとの見方が与党内にはある。

5月中旬までは10兆円台

5月中旬まで、政府・与党内では、2次補正予算の真水規模は1次補正の半分程度、10兆円台との見方が多かった。1)全国に発令された緊急事態宣言が14日以降徐々に解除される方向が示され、1次補正で9兆円弱計上された10万円の全国民一律給付の第2弾は不要、2)感染防止対策に巨額の公共投資は計上しにくい、といった理由だ。

しかし、2次補正は1次を大幅に上回る規模となった。予備費が10兆円と1次補正の1.5兆円から大きく膨らんだほか、家賃支援給付金の創設や、都道府県の医療提供体制強化のための「新型コロナ感染症緊急包括支援交付金」の増額なども計上される。

30兆円台への増額、官邸の意向

政府内には、緊急事態宣言が解除されても、新型コロナによる世界的な経済収縮による製造業の大幅減産や、外出自粛継続による国内サービス業への打撃は継続が予想され、「被害がどの規模になるか不明で、対策は逐次投入しかできない」(閣僚周辺)との声もあった。このため「必要ならば3次補正予算を議論するために、国会会期延長も俎上に上る」(政府関係者)との声が出ていた。

これに対し、ある与党関係者は「10兆円台から30兆円台に増額したのは、やはり支持率急落が背中を押したのだろう」と指摘。「3次補正は実施しない、そのための会期延長はしないとの官邸の意向も反映されている」と解説する。補正増額に向けた政府・与党の要求は徐々にエスカレートし「予備費のみで50兆円必要との要求も出てきた」(経済官庁)という。

会期延長阻止へ

毎日新聞と朝日新聞が先週末実施した世論調査では共に内閣支持率が危険水域とされる3割を割り込んだ。自民党内では、国民の3割が与党支持層との見方が強く、内閣支持率が3割を割り込んだことは、与党支持層内にも政権不支持の声が出始めたことと解釈される。検察庁法改正が三権分立に抵触するとの批判がツイッターなどで広がったうえ、黒川弘務・前東京高検検事長の賭けマージャン発覚による辞職、また、その処分内容についての批判も出ている。

別の与党関係者も「国会の会期が延長されると、黒川問題に加え、河井案里参院議員の公職選挙法違反疑惑など様々な論点で追及される可能性があり、延長阻止が官邸の意向だろう」と解説している。

(編集:石田仁志)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・経済再開が早過ぎた?パーティーに湧くアメリカ
・東京都、新型コロナウイルス新規感染10人 15人未満が12日連続
・「検査と隔離」もウイルス第2波は止められない 米専門家
・新型コロナの死亡率はなぜか人種により異なっている


20200602issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中