外出自粛の長期化で懸念される児童虐待──保育の拡充は子どもの命を救う
家庭という閉ざされた空間で四六時中親子が接していれば育児ストレスは増加する tomazl/iStock.
<都市部での児童虐待の増加が指摘されているが、実際には保育所の入所率の方が相関関係が強い>
コロナ感染防止のための「巣ごもり」生活が長引くなか、児童虐待の増加が懸念されている。学校が休校になっているため教員が各家庭を回って課題を届けているが、そこには異変が起きていないかを確認する狙いもあるようだ。
児童虐待防止への関心は年々高まっており、4月から施行されている改正児童虐待防止法では、親の体罰禁止が定められている(第14条1項)。「しつけ」と称して子どもを叩くことは、もう許されなくなった。
人々の意識の高まりは、相談件数の激増にも表れている。児童相談所が対応した児童虐待相談件数は1998年度では6932件だったが、2018年度では15万9838件に膨れ上がっている。通報の網の目が細かくなっているためで、悪いことではない。
あまり取り上げられないが、地域差もある。都道府県別の相談件数を見ると、最も多いのは大阪の2万694件で、2位は神奈川、3位は東京となっている(2018年度)。人口サイズを考慮して、各県の15歳未満人口1000人あたりの数に換算し、高い順に並べると<表1>のようになる。
全国値は10.4件だが、都道府県別にみると大阪の19.6件から鳥取の1.1件まで大きな開きがある。上位3位は大阪、埼玉、神奈川で、おおよそ都市部の地域で虐待相談件数が多いように思われる。内田良氏が「虐待は都市で起こる」(『教育社会学研究』76集、2005年)という論文を書かれているが、このテーゼが当てはまるようだ。
都市部では虐待が通報されやすい、ということかもしれない。田舎の顔見知りの間では許容される行いも、匿名の第三者の目に触れたら通報されやすい。
だが都市には虐待を誘発する環境条件があるのも確かで、よく言われるのは、人間関係が希薄で親子が孤立しやすいことだ。保育所不足もあり、乳幼児の家庭内保育が多く、家の中で親子が四六時中接している。