最新記事

児童虐待

外出自粛の長期化で懸念される児童虐待──保育の拡充は子どもの命を救う

2020年5月13日(水)14時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

6歳未満の乳幼児のうち、保育所(幼保連携、保育所型の認定こども園を含む)に通っている子の割合を見ると、島根の69.9%から埼玉の30.4%まで広く分布している(2018年度)。前者は、保育所に通うのが多数派の「公」型、後者は家庭での保育が多数派の「私」型保育のエリアだ。<図1>は、この指標と<表1>の児童虐待相談件数を関連付けたものだ。

data200513-chart02.png

保育所在所率が高い県ほど、虐待の相談件数が少ないという、うっすらとした傾向が見られる。相関係数は-0.4429で、有意なマイナスの相関関係だ。保育所在所率は、人口集中地区居住率(都市化率)よりも虐待相談件数と強く相関している。

地域単位の相関だが、思う所がある人は多いだろう。「親密性の病理」という言葉がある。家族という(閉じた)私空間で四六時中親子が接していては、育児ストレスも増すというもの。NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏が「保育所を広げることは、親を救うだけでなく、子どもの命をも救うということ」と言われているが、その通りだろう。

巣ごもり生活が続くなか、家庭内での犯罪が多く報じられている。保育を家庭の中に押し込めていると、弊害が生まれることの証左だ。大家族や専業主婦を前提とした「私」型の保育を、「公」型に切り替える時が来ている。

<資料:厚労省『福祉行政報告例』
    厚労省『社会福祉施設等調査』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中