最新記事

中国

欠陥マスクとマスク不足と中国政府

China Reportedly Takes Control of Mask Production After Complaints

2020年4月28日(火)18時30分
デービッド・ブレナン

新型コロナウイルス感染症の流行を受けて医療用マスクを生産する労働者(2月14日、江蘇省南通市) China Daily/ REUTERS

<医療品の注文が殺到した結果、世界中で中国製の欠陥マスクが発見された。メンツを潰された中国政府はマスク工場を政府の管理下に置き、必死のQC活動に励んでいるのだが>

中国政府が、医療用マスクの生産を国家の管理下に置いたと伝えられている。新型コロナウイルスの感染拡大のさなか、世界的に医療用マスクの需要が急上昇しているためだ。

新型コロナウイルスの危機が訪れる前から、中国は世界で使われる医療用マスクのおよそ半分に当たる1日あたり2000万枚を生産していた。パンデミック(世界的大流行)を受けて、中国のマスク業界はさらに急成長。現在は1日1億1600万枚以上を生産している。

世界で最も裕福な国々でさえ、第一線で働く医療従事者のために防護具(PPE)を十分に確保できずにいる。まして一般市民には手が届かない。国際社会は中国に助けを求めた。中国政府が新型コロナウイルス感染を隠ぺいしようとしたのではないかという疑念はあっても背に腹は変えられない。

中国がマスクの生産と輸出を管理している理由のひとつは、不良品だ。中国政府は、ウイルスが流行している他国の支援に乗り出しているが、ヨーロッパの一部の国から、中国から届いた医療物資が粗悪品だったという苦情が寄せられた。そこで中国政府自らが、品質管理を徹底せざるを得なくなった。

「3Mは国有化された」

しかし、中国共産党がマスクの生産と流通の監視を強化したことで、外国政府や企業の一部は、必要な医療物資を確保できなくなった。

トランプ大統領の通商担当補佐官ピーター・ナバロは2020年2月、フォックス・ビジネスに対し、米化学大手3M(スリーエム)の中国工場が、中国政府によって「事実上、国有化された」と述べた。

中国は当初、自国内の感染拡大を抑えるために、国内で生産されたマスクの輸出を控えるとともに、他国から膨大な数のマスクを買いつけていたようだ。しかし現在は、国内の流行がおおかた抑え込まれたこともあり、輸出規制は緩和されている模様だ。

たとえば、3Mは4月6日、中国にある自社工場で生産したマスク1億6650万枚を今後3カ月にわたって米国内の医療機関に供給することで米政府と合意した。また4月27日には、中国からのマスク150万枚がサウスカロライナ州に到着した。

しかし中国のマスクメーカーは、世界各地から寄せられた大量注文の処理に追いつけずにいる。PPEを取り扱うシカゴの企業iPromoの最高経営責任者(CEO)レオ・フリードマンによると、高機能N95マスク(米国労働安全衛生研究所規格の医療用マスク)を何百万枚も中国企業に発注していたが、キャンセルされたという。フリードマンは米フォーブスに対し、「(発注したN95マスクは)病院や州政府に納入するものだった」と語った。「入手できなくなったことを先週、病院などに伝えた」

<参考記事>マスク不足はなぜ起き、どうやって解消すべきなのか
<参考記事>マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、死者1700人・不明300人 イン

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中