最新記事

米中関係

ミズーリ州が新型コロナ被害で中国を提訴した深い理由

Missouri Opens Up a New Front Against China in Coronavirus Blame Game

2020年4月27日(月)19時20分
キース・ジョンソン

「(損害賠償を求める主張を)聞かせたい相手には連邦議会も含まれると私は考えている。狙いは中国政府の免責の幅を制限する法整備に向けた基盤作りだ」とワースは言う。「損害賠償や商業活動の例外規定が当てはまらないことなど先刻承知だ。中国から免責を奪うための法律を作って欲しいということだ」

米議会はそれを、2016年に成立させたテロ支援者制裁法(JASTA)でやった。これで9.11同時テロの犠牲者の遺族は、サウジアラビア政府に損害賠償を求めることが可能になった。言い換えれば、ミズーリ州の訴えは、JASTAの中国版を作ることかもしれない。

「何らかの具体的な行為を、FSIAの保護の対象外にすることはできる。例えば新型コロナウイルスを例外にするとか、もっと一般的に生物学的損害を例外扱いにするとかだ」と、ワースは言う。

上下両院の議員たちは、まさにそうした法律を作ろうとしている。上院では今週、「ストップCOVID法案」が提出される予定だ。故意であろうとなかろうと、アメリカの人やモノを傷つける生物を持ち込んだ外国主体を相手取った訴訟に道を開く法案だ。下院も同様の法案を用意している。

だがこれにはもちろん、問題がある。もしアメリカの裁判所が新型コロナウイルスの扱いに関して中国政府の責任を問えることになれば、世界中でアメリカがもたらした損害に対する訴訟が起こるだろう。

「もし新型コロナウイルスのことで中国政府を訴えられるなら、イラク戦争や地球温暖化でアメリカが訴えられることになりかねない」と、トラクトマンは言う。

(翻訳:村井裕美)

From Foreign Policy Magazine

20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マネタリーベース、12月は前年比1.0%減 4カ月

ワールド

トランプ氏のウクライナ特使、キーウ訪問延期 就任式

ワールド

北朝鮮、6日に新型極超音速ミサイルを発射 金氏は娘

ワールド

日鉄のUSS買収、なぜ安保懸念あるのか米政府の説明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 2
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に突き落とした「超危険生物」との大接近にネット震撼
  • 3
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も助けず携帯で撮影した」事件がえぐり出すNYの恥部
  • 4
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 5
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 6
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 7
    「これが育児のリアル」疲労困憊の新米ママが見せた…
  • 8
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 9
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強…
  • 10
    ロシア、最後の欧州向け天然ガス供給...ウクライナが…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中