ミズーリ州が新型コロナ被害で中国を提訴した深い理由
Missouri Opens Up a New Front Against China in Coronavirus Blame Game
人口10万人当たりの死者数で最低の中国を指差し、「信じられるか?」と言うAl Drago-REUTERS
<コロナ禍で被った健康的・経済的被害の責任を中国に求める訴訟を米ミズーリ州が起こした。「主権免除」という大きな壁があるのはわかっているのになぜ?>
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)を巡り、米ミズーリ州は21日、中国政府と中国共産党の責任を問う訴訟を米連邦地裁に起こした。これまでに5万人を超える死者が出るなど感染拡大が深刻なアメリカでは、中国の責任を追及する声が政府高官などから上がっている。
とは言うものの、現行法の下でミズーリ州が勝訴するのは難しいと見られている。同州の狙いはどちらかと言えば、連邦議会での法整備の動きを加速させることにあるようだ。念頭にあるのは2016年に成立した「テロ支援者制裁法(JASTA)」。悪意ある行為によって被害を受けたアメリカ国民が外国政府に訴えを起こすことを可能にする内容で、具体的には9・11同時多発テロの犠牲者遺族がサウジアラビアに損害賠償請求することに道を開くための法律だ。
ミズーリ州のエリック・シュミット司法長官が提出した訴状によれば、中国政府と中国共産党および複数の政府機関の対応は怠慢で欺瞞に満ちたもので、パンデミック(世界的大流行)の発生や急速な感染拡大、医療従事者が防護用の装備を十分に入手できなかったことへの究極的な責任を問われるべきだというのが同州の考えだ。
パンデミックの責任を中国に転嫁する動き
「感染拡大初期の重要な数週間、中国当局は世間を欺き、重要な情報を隠し、内部告発者を逮捕し、人から人への感染の証拠が積み上がっているのにそれを否定し、重要な医療研究を握りつぶし、多くの人々がウイルスと接触するに任せ、(医療従事者用の)防護用の装備を出し渋った。その結果、本来であれば不要で防止できたはずの世界的なパンデミックを引き起こすに至った」と、訴状には書かれている。「被告(中国側)は、膨大な死と苦しみと経済的損失をミズーリ州民を含む世界にもたらした責任がある。その責任を取らせるべきだ」
アメリカではパンデミックの責任をできうる限り中国に転嫁しようとする動きがドナルド・トランプ大統領を初めとする高官から出ている。アメリカ国内における健康的・経済的被害が拡大する中で、彼らは新型コロナウイルスのことを「中国ウイルス」とか「武漢ウイルス」と呼び、感染拡大に中国政府が果たした役割について攻撃を続けている。米中関係は今年のアメリカ大統領選において大きなテーマとなっているが、コロナ禍はトランプに新たな攻撃材料を与える形となっている。
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