新型コロナ都市封鎖が生み出す、動物たちの新世界
Animals Liberated by Pandemic?
この状況があと何週間も続いたら、どうなるか。相当な変化があり得る。餌を求め、新たな生息地を求める動物たちの大移動が始まるかもしれない。以前より攻撃的になる動物もいるだろう。人間とクマが、かつてないほど密接に接触する機会も想像できる。
変化は大きいかもしれないし、ささやかで一過性のものに終わるかもしれない。パーキンスとコームズから予想を聞くことはできなかった。ただし、ほとんど何も変わらない可能性もあるという。
仕方がないから、私は双眼鏡を片手に外へ出てハドソン川沿いの道を歩いてみた。とても静かだ。交差点の信号機にスズメが巣を作っている。桟橋に泊まるレストラン船の風よけでは海鳥のアビが遊んでいた。この辺りではめったに見ない鳥だ。
人が消えたので、やはりマンハッタンの生態系に変化が兆しているのだろう。科学的な根拠はないが、人類の危機に乗じて野生が復活しつつあるように思えた。
歩道にドングリがたくさん転がっていた。実は食べ尽くされ、残ったのはかさだけ。道端のごみ箱が空っぽなのに気付いたリスたちが、巣穴に残しておいた備蓄のドングリを腹いっぱい詰め込んで逃げ出す姿が目に浮かぶ。
雨が降りだしたので帰り支度を始めたら、冷たい視線を感じた。振り向くとフェンスの上に尾の赤いタカがいて、こちらをにらんでいた。
距離は1メートルほど。同類の人間とは少なくとも2メートル離れなければいけない時代なのに、こんなに近くでタカとご対面とは。互いに見つめ合う時間が(たぶん1分もなかったはずだが)長く感じられた。でも近くの高速道路で車がクラクションを鳴らしたら、驚いて舞い上がり、川の向こうへ飛んでいった。
さよなら、また会う日まで。
©2020 The Slate Group
<本誌2020年4月28日号掲載>
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