新型コロナ都市封鎖が生み出す、動物たちの新世界
Animals Liberated by Pandemic?
人類の行動パターンの大きな変化は自然界に影響を及ぼすはずだ PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTO BY MASKOT/GETTY IMAGES PLUS
<ネズミは食料を求めてレストランから住宅へ。シカの群れを追い掛けてクマやコヨーテも街にやってくる? 食物連鎖が崩れて動物の大移動が始まるかもしれない>
マンハッタンの街並みから人影が消えて、もう何週間にもなる。地球規模でも人類のほぼ半数が、散歩や必需品の買い出しを除けば外出を制限されている。なんとも異様な世界になったものだが、実は身近な動物たちの暮らしも未体験ゾーンに突入しつつある。
いや、ベネチアの運河に白鳥が「戻ってきた」というのは嘘だ(あそこには以前から白鳥がいる)。野生のゾウが中国奥地の茶畑で酔いつぶれていたというのも嘘。ネットにあふれるこの手の話のほとんどはフェイク(または誤解か改ざん)だが、自然界に異変が起き始めているのは事実。今は人類が地球環境を左右する時代だというのが本当なら、私たちの行動パターンの大きな変化は自然界に何らかの影響を及ぼすはずだ。
映画の『ジュマンジ』のように、動物たちの暴走が始まるかもしれない。公園やビーチでごみをあさっていた小動物たちが続々と街に押し寄せてくる。非常階段にはアライグマがすみ着き、地下鉄の駅からはネズミがあふれ出る。カモメやハトが空を舞い、ごみ回収車や買い物帰りの人から食べ物をかすめ取る。飼い主と散歩中の小犬にタカが襲い掛かり、引っさらっていくかもしれない。
神話や文学の世界では、社会が崩壊してこの世の終わりが近づくと、必ずと言っていいほど自然界にも異変が起きる。イナゴの大発生やネズミの大移動、空を埋め尽くす不気味な鳥たちの影......。
さすがにそれはないだろうが、今の外出制限が長く続けば、動物たちにも何らかの異変が起きておかしくない。
でも「予想はしにくい」と言うのは、自然・環境保護団体オーデュボン協会のニューヨーク支部のケイトリン・パーキンス。なぜなら「現在の状況がいつまで続くか分からない」からだ。
しかし彼女は日頃から、人間と動物が至近距離で共存する都市空間を観察し、ニューヨーク市とその周辺の自然保護活動に携わっている。例えば、ハドソン川沿いにある大型展示場ジャビッツ・センター(今は新型コロナウイルスの患者を収容する仮設病院に転用されている)の屋上に設けられた「グリーン・ルーフ」だ。
鳥類の人工的な生息地としては全米第2位の規模で、約30種類の鳥と5種類のコウモリがすみ着いている。夏にはセグロカモメがヒナを育て、ハドソン川で魚を捕り、公園に落ちているサンドイッチの残りをあさる。「ニューヨークの人と動物の接点は食べ物だ」と、パーキンスは言う。