新型コロナ都市封鎖が生み出す、動物たちの新世界
Animals Liberated by Pandemic?
急激に行動が変化しそうな動物は身近にいる。市内ではリス、ハト、ネズミ、アライグマ、カモメ。周辺地域のクマやコヨーテも、新しい環境に適応しなければならない。
人間の残飯に頼ってきた動物たちは別の食料源を探し、餌場を求めて移動することになる。「興味深いことに」と、パーキンスは言う。「都会で生きる動物はたくましく、手に入るものは何でも食べる。だから短期的な環境変化にも素早く対応できる」
小さな変化から連鎖反応
動物たちの素早い対応の第一は、引っ越しだろう。大半のレストランが休業し、地下鉄の乗客が激減した今、ネズミは食料を求めて生活圏を移すしかない。アライグマやリスも公園が閉鎖されれば、ごみ箱に頼れない。ただし、ごみが公共空間から消えても、人間の食生活は変わらない。だからネズミは「残飯の出そうな住宅の近くに集まってくる」と、パーキンスは言う。
彼女の婚約者でコロンビア大学研究員のマシュー・コームズも、ニューヨークにいるネズミの研究で博士号を取得した人物。「ネズミと人間の関係は密接だ」と、彼は言う。「まず注意すべきは、レストランの近くにある住宅。閉店後に路上に出されるごみ袋を当てにしていたネズミたちが異変に気付けば、近場の住宅に目を向ける」
それでも交通量が多くて広い道路、とりわけ自動車専用道を野生動物が渡るのは難しい。「車が頻繁に通る道路があれば、野生動物の侵入を防ぎやすい」と、パーキンスは言う。「用心深い動物はそんな道を渡らない」
だが今は、交通量が大幅に減っている。道路は人工的な障壁の役目を果たせない。ならばウェールズの小さな町で実際に観察されたように、野生のカシミアヤギの群れが道路を悠然と歩き回る光景が見られてもおかしくない。人間に追われ、隠れていた動物たちが、元の居場所に戻ってくるわけだ。
素晴らしい、と単純に喜んではいられない。なにしろ都市空間の主客が転倒する事態だ。想像してみてほしい。動物園にいる動物たちが、ある朝目を覚まして、檻の鉄格子がなくなっていることに気付いたらどうなるか。道を渡ってきたシカの群れが住宅の裏庭をのんびり歩き回るだけなら牧歌的な光景だが、追い掛けるようにコヨーテやクマもやって来るはずだ。