最新記事

イラン

トランプ、挑発的なイラン船は「撃沈せよ」 大統領再選へ人気取りか

Trump Threatens to ‘Shoot Down and Destroy’Iran Ships

2020年4月23日(木)18時15分
トム・オコナー

ペルシャ湾で米海軍のミサイル駆逐艦ポール・ハミルトンのすぐそばを通過するイランの高速艇 U.S. Navy/REUTERS

<米イラン対立の激化でコロナ危機のさなかにもキナ臭さを増すペルシャ湾>

ドナルド・トランプ米大統領は4月22日、イランの艦船が挑発行為をした場合は、容赦なく攻撃するよう米軍に指示したとツイートした。

「イランの砲艦が海上でわれわれの艦船に嫌がらせをしたら、1隻残らず撃沈させ、破壊するよう海軍に指示した」

このツイートの1週間前の4月15日、米海軍第5艦隊がペルシャ湾を航行中、イラン革命防衛隊の高速戦闘艇11隻が異常接近し、周囲を取り巻いた、と米当局が発表した。第5艦隊は、ルイス・B・プラー機動揚陸プラットフォーム、アイランド型哨戒艦マウイなどで編成されている。

米側はイランの精鋭部隊である革命防衛隊の「プロらしからぬ危険な行為」を非難したが、イラン側は4月15日の事件も、その1週間前にイラン船シャヒド・シヤボシの航行が妨害されたとする事件も、米海軍の「違法で、プロらしからぬ、危険で、無謀とすら呼べる行為」に責任があると主張している。

イラン、アメリカ共に新型コロナ危機への対応に追われるさなかにトランプが脅迫めいたツイートをしたことに、イラン当局者は怒りをあらわにしている。

トランプの愚行を警戒

「世界の関心がCOVID-19との戦いに集中しているときに、米軍は祖国から1万キロも離れたペルシャ湾でいったい何をしているのか」と、イランの国連代表の報道官は本誌に語った。「イランはこれまでどおり、いかなる脅しにも屈することなく、国際法に基づいて、あらゆる侵略から躊躇なく領土を守る」

米海軍は空母「セオドア・ルーズベルト」での集団感染など、コロナで大打撃を受けているが、イランも感染拡大で中東最多の死者を出している。

イラン軍報道官のアブルファズル・シェカルチ准将は「アメリカは他国いじめにかまけていないで、感染対策に全力を尽くすべきだ」と、国内の有力メディア「イラン学生通信」に語った。

イラン議会の国家安全保障・外交政策委員会のメンバーであるアラディン・ボロジェルディもイラン学生通信の取材に応じ、「トランプは(コロナ対応で)全米の州知事に質問攻めにあっても、それに答える能力もないありさまだが、それよりも彼の関心事は11月の大統領選と世論の動向だ」と持論を述べた。「今は有権者の目を国内の危機から逸らそうと躍起になっており、もっと愚かしい暴挙に出て、事態をさらにこじらせかねない」

アメリカが新たな攻撃を行えば、イランは今年1月にイラクの米軍基地に加えたミサイル攻撃よりも「さらに大規模な報復」を行うと、ボロジェルディは警告した。

<参考記事>イランで感染を広めたのは「世界一のおもてなし」?
<参考記事>イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中