トランプ、挑発的なイラン船は「撃沈せよ」 大統領再選へ人気取りか
Trump Threatens to ‘Shoot Down and Destroy’Iran Ships
それでも米国防総省はいざとなればトランプの指令を実行する構えだ。
「米軍が展開するあらゆる能力、危険海域に展開するあらゆる艦船は、固有の自衛権を有している」と、ジョン・ハイテン米統合参謀本部副議長は記者会見で語った。「言い換えれば、敵対的な行為もしくは敵対的な意図を察知すれば、それに対応する権利がある、ということだ。その対応には殺傷兵器の使用も含まれる」
アメリカとイランは1980年代のイラン・イラク戦争の終盤以降、直接的に交戦したことはないが、今年1月アメリカがイラクのバグダッド国際空港で革命防衛隊の司令官ガゼム・ソレイマニを殺害したことへの報復として、イランはイラクにある米軍の駐留基地を弾道ミサイルで砲撃し、中東から米軍の撤退を求める動きを強化した。
アメリカとの対立激化に伴い、イランは革命防衛隊と国軍の軍備増強とともに、国産兵器の開発に力を入れてきた。
トランプのツイートの前日の21日には、革命防衛隊は初めて軍事衛星「ヌール」を打ち上げ、軌道投入に成功した。「今やわれわれは宇宙から世界を見ることができる」と、発射の瞬間を見守った革命防衛隊のフセイン・サラミ司令官は誇らしげに宣言した。
ホルムズ海峡の波高し
米政府は衛星打ち上げを弾道ミサイル開発と関連した動きとみている。こうした動きがイランの核兵器開発の一環とみられること、さらに中東全域でイランが武装勢力に資金を提供している疑いがあることを理由として、トランプ政権はイランと米英など6カ国が2015年に結んだ核合意から離脱し、経済的・政治的にイランを締め上げる「最大限の圧力」作戦を実施してきた。
アメリカがイラン産原油の禁輸を打ち出したことに対抗し、イランは世界の石油輸送の生命線であるホルムズ海峡の封鎖をちらつかせてきた。昨年6月にはオマーン沖で石油タンカーが攻撃される事件が相次ぎ、米国防総省はこれを革命防衛隊の襲撃とみて、周辺海域のパトロールを強化した。
昨年9月にサウジアラビアの石油施設がドローンと巡航ミサイル攻撃を受け、イエメンの武装集団ホーシー派が犯行声明を出した事件も、米政府はイランの仕業とみている。さらにイラクで米軍やNATOの駐留基地にロケット弾攻撃を行なった武装集団も、イランの支援を受けていると、米政府は主張している。
加えて、昨年6月にはホルムズ海峡上空を飛行中の米軍のドローンがイランに撃墜されるなど、アメリカとイランは互いの反応をうかがいつつ挑発行動を繰り返している。コロナ禍のさなかでもペルシャ湾を包む一触即発の不穏な空気は濃くなるばかりだ。
2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。