最新記事

イラン

トランプ、挑発的なイラン船は「撃沈せよ」 大統領再選へ人気取りか

Trump Threatens to ‘Shoot Down and Destroy’Iran Ships

2020年4月23日(木)18時15分
トム・オコナー

それでも米国防総省はいざとなればトランプの指令を実行する構えだ。

「米軍が展開するあらゆる能力、危険海域に展開するあらゆる艦船は、固有の自衛権を有している」と、ジョン・ハイテン米統合参謀本部副議長は記者会見で語った。「言い換えれば、敵対的な行為もしくは敵対的な意図を察知すれば、それに対応する権利がある、ということだ。その対応には殺傷兵器の使用も含まれる」

アメリカとイランは1980年代のイラン・イラク戦争の終盤以降、直接的に交戦したことはないが、今年1月アメリカがイラクのバグダッド国際空港で革命防衛隊の司令官ガゼム・ソレイマニを殺害したことへの報復として、イランはイラクにある米軍の駐留基地を弾道ミサイルで砲撃し、中東から米軍の撤退を求める動きを強化した。

アメリカとの対立激化に伴い、イランは革命防衛隊と国軍の軍備増強とともに、国産兵器の開発に力を入れてきた。

トランプのツイートの前日の21日には、革命防衛隊は初めて軍事衛星「ヌール」を打ち上げ、軌道投入に成功した。「今やわれわれは宇宙から世界を見ることができる」と、発射の瞬間を見守った革命防衛隊のフセイン・サラミ司令官は誇らしげに宣言した。

ホルムズ海峡の波高し

米政府は衛星打ち上げを弾道ミサイル開発と関連した動きとみている。こうした動きがイランの核兵器開発の一環とみられること、さらに中東全域でイランが武装勢力に資金を提供している疑いがあることを理由として、トランプ政権はイランと米英など6カ国が2015年に結んだ核合意から離脱し、経済的・政治的にイランを締め上げる「最大限の圧力」作戦を実施してきた。

アメリカがイラン産原油の禁輸を打ち出したことに対抗し、イランは世界の石油輸送の生命線であるホルムズ海峡の封鎖をちらつかせてきた。昨年6月にはオマーン沖で石油タンカーが攻撃される事件が相次ぎ、米国防総省はこれを革命防衛隊の襲撃とみて、周辺海域のパトロールを強化した。

昨年9月にサウジアラビアの石油施設がドローンと巡航ミサイル攻撃を受け、イエメンの武装集団ホーシー派が犯行声明を出した事件も、米政府はイランの仕業とみている。さらにイラクで米軍やNATOの駐留基地にロケット弾攻撃を行なった武装集団も、イランの支援を受けていると、米政府は主張している。

加えて、昨年6月にはホルムズ海峡上空を飛行中の米軍のドローンがイランに撃墜されるなど、アメリカとイランは互いの反応をうかがいつつ挑発行動を繰り返している。コロナ禍のさなかでもペルシャ湾を包む一触即発の不穏な空気は濃くなるばかりだ。

20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中