最新記事

北朝鮮

金正恩重体説に飛びつく期待と幻想

The Curious Case of the Maybe Dead Dictator

2020年4月22日(水)18時35分
モーテン・ソエンダーガード・ラーセン

デルリーは今北朝鮮で何が起きているか、今後何が起きるかを推測する気はない。何らかの判断を下す前に北朝鮮からの公式発表を待っている。韓国と中国の当局者はどちらも、金正恩が重篤な状態にあるという報道を否定した。

「最近、金正恩の健康状態を一部のメディアが報じたが、これについて確認できることはなにもない。これまでのところ、北朝鮮国内における特殊な動きは確認されていない」と、韓国大統領府のカン・ミンソク報道官は外国記者団への声明で述べた。

だが北朝鮮ウォッチャーのほとんどが指摘しているように、金正恩重体説は完全に事実無根ともいえず、まったく信憑性がないとはいえない。36歳(と思われる)金の健康状態が悪いことは有名だ。ヘビースモーカーで、BMI(肥満度指数)は「重度の肥満」に分類される45だ。そしてデイリーNKの報道のとおり、金が実際に手術を受けたという点に関しては意見がほぼ一致しているようだ。

「北朝鮮だけでなく中国や韓国からの情報からすると、金正恩が医療処置を受けた可能性が高いが、命にかかわるような状態だとは思わない」と、ゴは述べた。

転機だが混乱はしない

今のところ、北朝鮮で異常事態が発生していることを示す不規則な軍の動きは見られず、通信量の急増もない、とゴは言う。だが、専門家の多くは重体説を完全に否定しようとはしない。金正恩が死んだら、何が起きるだろうか。

「金が本当に死んだら、それは現在の体制に大きな打撃を与え、北朝鮮は転機を迎えることになる。だが不安定化するのではなく、体制の移行は安定したものになるだろう」と、ゴは言った。

北朝鮮には、金一族しか指導者になれないという暗黙の了解がある。幸いなことに、金の妹である金与正(キム・ヨジョン)のように、すぐに後を継ぐことができる人間が数人いる。

金与正は最近、以前より活動が目立っており、韓国を非難する公の声明を出すなど、指導者候補として存在感を示している。残念ながら、アナリストらは、北朝鮮はまだ女性を指導者とする準備ができていないと言う。

「北朝鮮は非常に男性優位社会なので、男の指導者が理想とされる。つまり最高指導者の妹であっても、女性が指導者の地位につくのは難しい。金与正は、金正恩の兄の金正哲(キム・ジョンチョル)のような、もっとふさわしい指導者が見つかるまで、移行期の政権あるいは国の影の実力者となると思う」と、ゴは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中