韓国、新型コロナ自宅隔離者の無断外出が続出 犯罪者のような電子リストバンド装着へ
韓国政府が導入を決定した自宅隔離で違反をした者に装着する「安心バンド」とアプリ。 MBCNEWS / YouTube
<圧倒的な検査数でメガクラスターを抑えた韓国だが、入国者の感染増にまた危機感を強めている>
新規感染者数が落ち着きをみせはじめ、新型コロナウイルス感染拡大のピークから脱したように見える韓国だが、ここにきて2週間の自宅隔離者が無断で外出する隔離違反が目につき始めた。そこで、韓国新型コロナウイルス中央災難安全対策本部は今月11日、隔離違反をした者の手首に電子リストバンドを着けて管理することを決めたと発表した。
この電子リストバンドは「安心バンド」という名称で、スマートフォンにダウンロードされたアプリと、ブルートゥースを通じて連動している。自宅隔離者の安心バンドとスマートフォンが一定の距離を離れてしまったり、安心バンドを手首から外してしまったり、また登録地域から離れるなどすると、自動的に安全対策本部へ通報される仕組みだ。
当初、海外帰国者や感染者との濃厚接触が疑われるなど2週間の隔離を余儀なくされた対象者全員に装着をするという話だったが、プライバシーの問題や人権侵害などの反対意見が多く上がり、自宅隔離者全員ではなく一度違反をした者にのみ着用すると公式発表された。安全対策本部は、1日4千個の製造を進めており、今後2週間以内に着用を実施するという。
日本人の感覚からすると、かなり厳しいと感じてしまう今回の処置だが、ここまでせざるを得ない経緯があった。韓国では、4月1日から海外からの帰国者全員に2週間の自宅隔離が義務付けられていたが、現在までにそのうち106名が隔離違反を犯してしまっている。そのうち故意に外を歩き回り、旅行に出かけるなど悪質だと判断された12人は検察に起訴されている。
安全バンド導入のきっかけとなった「江南母娘」事件
特にこの問題が注目されだしたのは、通称「江南母娘」が自宅隔離違反をした"事件"がニュースで大きく取り上げられたからだ。
この母娘、本来は先月アメリカ留学から帰国した娘が2週間の自宅隔離となるのを無視し、韓国の観光地として有名な済州島へ二人で3月20日から4泊5日旅行した。
娘はニューヨークからの帰国者で、旅行初日に悪寒と体や喉の痛みなど新型コロナウイルス感染の症状があったにもかかわらず済州島行きの飛行機に搭乗。旅行が終わりソウルに戻った24日江南区にある保健所選別診療所で検査を受け、翌日に陽性が発覚した。その結果を受け母親も26日に検査を実施し陽性が確認された。
済州島では、この「江南母娘」が陽性判定となったことで、島内20余りの店舗が臨時閉店となり96人の島民が自宅隔離となる被害を受けた。このため済州道知事は母娘に1億3200万ウォンの損害賠償請求の訴えを起こしている。
その他にも、自宅隔離を守らない事例は数え切れない。TV局員がアメリカ帰りでの隔離を無視し出社する、フランス・パリ帰りの男性が友人の会社を訪ねる、入社間近の新入社員予定者が必要書類を取りに実家に帰る......など、多くの事例が報告されている。