尿と便から異常を察知して知らせるスマートトイレ
Smart Toilet That Can Detect Disease in Urine and Feces of User Created
本人は何もしなくても、あとはトイレがやってくれる Artem Ermilov/iStock.
<個体識別、撮影、検体採取、分析、アラート等々を一手に処理するスマートトイレの元祖は、実は日本製だった>
人間が落とした便や尿から収集したデータから病気を発見する「スマートトイレ」が、アメリカの科学者によって開発された。
スタンフォード大学の研究者を中心とした研究チームが開発したのは、普通のトイレに設置できる装置。試験紙やビデオカメラなど多くの機能が組み込まれており、トイレを使用した人の排せつ物の特徴を分析する。
このスマートトイレの詳細は、学術誌『ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング』で発表された。研究チームが目指すのは、使用者の健康を観察し、異常があれば通知して、病気の予防や予測につなげられるトイレだ。大腸癌や泌尿器癌などを発見できるという。
病気の予防・発見を助けるスマート機器はますます普及が進んでおり、市場は急速に動いている。
2020年2月にはイギリスで、ウェアラブル機器を活用してアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の兆候を見つけることを目指す世界的な取り組みが立ち上げられた。デジタルヘルス技術を使って、神経変性疾患のリスクがもっとも高い人々を見きわめ、早期発見率を上昇させることが狙いだ。
期待大のスマート健康機器市場
また、アメリカ心臓学会が発行する学術誌『Journal of the American College of Cardiology』でこのほど発表された研究から、活動量計(フィットネス・トラッカー)やスマートウォッチ、スマートフォンなどのモバイル健康機器を使えば、不整脈の原因となる心房細動の患者を検診・発見できることが明らかになった。
スマートトイレを使って健康観察を行おうという考えは、いまに始まったものではない。日本のトイレメーカーTOTOは、早くも2000年代に、尿糖値とホルモン濃度を測定できるトイレを開発している。しかし、当時はそうした製品の需要はあまりなかった。
2019年3月には米ロチェスター工科大学の研究チームが、トイレを使った心臓血管監視システムを開発したと発表した。このトイレの便座は、心拍数や血圧を計測できる。うっ血性心不全の患者に提供し、収集データを分析すれば、病状が悪化した際に医師に警告が行く仕組みだ。
このたび発表された最新トイレは、ほかのスマートトイレよりも先を行く設計がなされている。使用者の尿や便からデータを収集する方法が多様なのだ。「このアイデアは15年以上も前から存在している」。論文の責任著者で、スタンフォード大学医学部教授兼放射線科長のサンジブ・ガンビールは声明でそう述べた。チームはすでに、被験者21名による予備研究を終えている。