最新記事

ヘルス

尿と便から異常を察知して知らせるスマートトイレ

Smart Toilet That Can Detect Disease in Urine and Feces of User Created

2020年4月7日(火)19時28分
ハンナ・オズボーン

このスマートトイレでは、使用者の識別は、流すボタンに搭載された指紋認証と、肛門上皮の特徴を識別できる内蔵カメラで行われるとガンビールは説明している。「肝心なのは、健康状態に関する正確な個別情報を提供することだ。よって、トイレが使用者を確実に識別できるようにしなければならなかった。奇妙に聞こえるとは思うが、お尻の穴の形状や状態はひとり一人異なっていることがわかった」

尿と便のサンプルは、撮影後に処理される。それからアルゴリズムを使い、排尿・排便時の流量や時間の長さ、濃度や量が正常かどうかがチェックされる。「試験紙」を用いた物理的な解析も行われ、装備された機械がさまざまなバイオマーカーを測定する。いずれは、特定の疾患を対象に、オンデマンドでテストを実施できるようにしたいと研究論文には書かれている。スマートトイレが、特定の使用者とその健康リスクに照らし合わせた個別の監視システムとなるわけだ。

このスマートトイレで収集されたデータは、クラウドベースの安全なシステムに送信・保存されるという。使用者を識別するために使われたスキャン画像は誰の目にも触れない。収集データは医療機関に提供される。尿サンプルで何らかの異常が見つかれば、アプリなどを通じて担当医に送信することも可能だ。情報は、その後の治療を導き出すために役立てられる。ガンビールはさらに、「厳密なステップ」を踏んでいるので、提供データから個人が特定されることはないと話す。情報は、HIPAA(アメリカにおける医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)の下で保護される。

課題は過剰診断とアラート疲れ

このスマートトイレのシステムは今後、より規模の大きい臨床研究でテストする必要がある。また、人間の排せつ物に関する基本データを改善して、システムの最適化を図らなくてはならない。「主な目標は、過剰診断を減らすことだ。それに関係した不具合としては、誤認警告や、使用者のアラート疲れ(大量の警告が届くことで油断したり集中力を欠いたりする状況)、必要のない治療などがある」と論文には書かれている。「収集された基本データは、治療方針を決定したり、個別の疾患を管理したりするために使われるだけではない。多くの重篤症状を速やかに見きわめて病状を緩和できるよう、『炭鉱のカナリア』としての役割を果たすこともできる」

ガンビールの願いは、開発したスマートトイレがいつか、家庭で使えるようになることだ。「スマートトイレは、通常は気にも留めない情報源を活用できる、申し分ない方法だ」とガンビールは言う。「それに、使用者は特別に何かをする必要もない」
(翻訳:ガリレオ)

20200331issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月31日号(3月24日発売)は「0歳からの教育 みんなで子育て」特集。赤ちゃんの心と体を育てる祖父母の育児参加/日韓中「孫育て」比較/おすすめの絵本とおもちゃ......。「『コロナ経済危機』に備えよ」など新型コロナウイルス関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中