最新記事

中国

志村さん訃報で広がる中国非難の中、厚労省の「悪いのは人でなくウイルス」は正しいのか

2020年4月1日(水)11時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

武漢を訪問する習近平を映し出すスクリーン(3月10日撮影、北京のショッピングセンターにて) Thomas Peter-REUTERS

志村けんさんの訃報を受けて中国を非難するコメントが多い中、厚労省の「悪いのは人でなくウイルス」発言が引用されている。それは正しいのか?中国の庶民は悪くないにせよ、習近平の罪を見逃すことはできない。

広がった中国へのバッシング

3月30日、長きにわたって日本国民に幅広く愛されてきた志村けんさんの訃報が伝えられると、多くの日本人は衝撃と共に悲しみに包まれた。その悲しみは怒りへと変わり、ネット上では「悪いのは中国」とか「志村けんを殺したのは中国だ」といった種類のツイートが溢れ出た。

たしかにこの「中国」を「中国人」と書いているコメントも多く見られ、これを「ヘイトスピーチ」と非難する声もまた同時に上がっている。

そのような中、厚生労働省がかつて(2月1日に)言った「決して人が悪いわけではなく、ウイルスが悪い」という言葉を以て、中国へのバッシングを抑制させようとする言動もある。たとえば3月30日付けの<志村けんさん死去で広がる「中国ヘイト」殺害を呼びかける悪質ツイートも>では、最後に<日本の厚生労働省も「人が悪いわけでなくウイルスが悪い」と会見で呼びかけている。>と結んでいる。

良識的と言えばそうかもしれないが、うっかりすると、この言葉にはとてつもなく危うい視点が潜んでいることにも、私たちは目を向けなければならない。

中国のネットユーザーも「言論弾圧が人を殺す」と中国当局を非難

2月13日付のコラム<言論弾圧と忖度は人を殺す──習近平3回目のテレビ姿>で書いたように、武漢の李文亮医師は12月30日に「原因不明の肺炎はSARSのコロナウイルスに似ている」とウィチャットで警鐘を鳴らしたが、武漢公安に「デマを流して社会秩序を乱した」として1月1日に摘発された。二度とこのようなデマは流しませんという誓約書にも署名捺印させられた。その李文亮が2月7日未明にまさに新型コロナウイルス肺炎で亡くなったのを受けて、中国のネットでは怒りが爆発し、多くのネットユーザーが悲しみを表した。と同時に李文亮に対する当局の「言論封殺」を激しく非難した。

その時にネットに書き込まれた言葉に「言論弾圧は人を殺す」というのがある。

中国のネットユーザーが、中国当局への怒りを表した言葉だ。

李文亮の死を受け止め切れず、悲しみのどん底に追いやられた中国の庶民が、「中国当局が李文亮を殺した」と怒りを爆発させたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中