最新記事

医療崩壊

新型コロナ:ECMOの数より、扱える専門医が足りないという日本の現実

LAST DOCTOR STANDING

2020年4月18日(土)21時00分
小暮聡子(本誌記者)

――全国のコロナ患者で、ECMOを使用した人はこれまでに何人で、うち回復し退院された方は何人いるのか。

4月12日の学会集計の発表によれば、日本全国でECMOが使用されたのは75人。ECMO治療がすでに終了したのは36人で、そのうち亡くなってしまった方は11人。良くなってECMOを終了した人は25人。ECMO治療が終了した人に限って言えば、7割は回復している。残りの39例は現在治療中だ。

――今、日本でECMOが必要なコロナ患者はどれくらいいるのか。

患者さんはあふれている。どこにも行きようがない状態になっている。ここ数日で言うと、ECMOが必要な状態だが、対応できる病院の空きベッドがなくて、もう一晩耐えなくてはいけない、さらにもう一晩......とECMOを使えずに待機している状態の患者さんが都内にも関東圏内にも、博多などにもあふれている。

(済生会宇都宮病院がある)北関東は、数を見ればわかるが、まだ落ち着いている。緊急事態宣言が出ている地域は、ECMOをやるキャパシティーが全くない。

そのため緊急事態宣言が出ていない地域にECMO患者を送り出そうという動きが出てきている。だが行政は自分の県が最優先なので、他県からECMO患者を受け入れている余裕などない、と突き返したりしている。

――医療崩壊が起きると医療現場と患者には何が起きるのか。

医療崩壊が起きると、コロナではない人も死ぬ。病気というのはコロナだけではない。コロナ治療のかたわらで、それ以外の病気で人工呼吸器の治療を受けている人もいれば、心臓が悪くてECMOの治療を受けている人もいる。

なので、地域のICUのベッドがどんどんコロナ患者で埋まっていくと、それ以外の重症の患者さんの行き先がなくなる。コロナが広がると、他の病気で患者が死んでいく。これが医療崩壊だ。

当然、コロナで人がたくさん死んでいくことも含むが、医療崩壊はおそらくコロナ以外の患者さんがばたばたと死んでいくというような形で進んでいく。

それを回避するためにできることは、何よりも、コロナを蔓延させないこと。コロナの患者さんを増やさないことだ。人が動けばコロナも動く。だからどうか、動かないでほしい。

<本誌2020年4月28日号(4月21日発売)掲載>

cover0428-01.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中